お 預 け  −4− 


つまり、彼は最低でも成人式が終わるまでお預けを食らったわけである。

まったく。

手順も考えず行き当りばったりに、

しかも飲みの席で酔っ払い相手になんか言うからこうなるんだ。

すがるような眼差しを向けられたが、苦笑して返してあげた。

「とりあえず、礼儀を良く教えてもらってから出直したら?2年後に」と。





ヒカル君はしばらくの間、青い顔をしながら両親‘sに必死に声をかけていたが、

酔っ払い集団にまったく気にもかけてもらえず。

「ちくしょー!!」

といいながら、すぐ傍にあった缶ビールを一気に仰いでいた。





そして・・・

「ちょ!ちょっとヒカル大丈夫?」

「大丈夫だーぁ?!だいたいなぁ〜。あかりがぁー悪いんだからなぁ。
泣いたりするからぁ〜」

「な、なんで私が!!ヒカルが悪いんでしょ!それより大丈夫?」

「あぁ〜。大丈夫に決まってるだろぉー」

ヒカル君泥酔である。




「わー!もう飲んじゃだめー!」

ヒカル君の手から2本目のビールを取り上げる妹。

「き、気持ち悪い・・・・。眠い・・・・」

青い顔をしながら、そのままそこに横になる。

撃沈である。





「これは・・・・。どうやら鍛えがいがありそうですなー」

「いや、面目ない限りで・・・」

「まだまだ、子供ですもの」

「本当にまだ子供で・・・」




あらあら、ヒカル君。

まだ飲めないくせに無理してお酒に手をだしたりするから、ますます子供扱いだわ。

さっきまで泣いていたはずの妹は、今度は甲斐甲斐しくヒカル君の介護をしている。

そんな様子を結局は嬉しそうに、楽しそうに眺めている両親‘s。





「まあ、いずれですな。まだ2人は子供ですからねー」

「そうですねー。まだ先のことで・・・」

そんなことを言いながらも、結局は未来を楽しそうに話す両親達。

まあ、あの2人の様子を見ていれば、彼らの将来はおのずとわかるし。





「あーあ。どうやら妹に先を越されるかなー」

きっと早ければ2年後にはそうなるのかもしれない訳だし。

あの調子じゃ、ヒカル君はそんなに長くは待てないだろうし。

私は結婚なんていつになるかわからないし。

目の前の仲の良さそうな2人。

2人の将来を思い描いて幸せそうな両親‘s。





別れたばかりの男の顔が浮かんでくる。

グィとコップに残っていたお酒を空ける。

「まずは、新しい男を探さなきゃなー」

そして私は新たなサワーの缶を開けた。






この日、両親達の楽しそうな笑い声の中、

静かにひたすら最後まで飲み続けていたあかりの姉が空けた缶はかなりの数にのぼり、

それでも一見平然としているように見えた。

その姉と同じ血を引き継いでいるあかりの酒の強さはどれほどになるのか。

それはあと1年とちょっと先に判ることである。




最後までお読みくださりありがとうございます。 まったく、全然、甘いお話でありませんでしたね(^_^;) まあ、浮かんできてしまった訳でして。 ヒカル君、あかりちゃんの大学生活での虫除けに「結婚してやるー!」と思うわけですが、 酔っ払い集団の両親‘sにあえ無く阻まれると。当然です。 以前の作品「アキラ君のため息の訳」にちょこっと出てきているエピソードでした(^.^)


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