驚愕のあまり、ぼーぜんと立ちすくんでいると。美少女さんがにこやかに近づいてきた。
「始めまして、藤崎あかりっていいます。今日は無理言っちゃってごめんね」
目の前で見てもやっぱりすごく可愛い。
「あ、いえ、僕たちも勉強になりますから、よろしくお願いいたします」
どきどきしながら何とか挨拶をする。
「こちらこそよろしくお願いいたします」
にっこり笑って頭を下げてくれた。藤崎さんに笑顔で頼まれたら断れなさそう。
進藤さんがさっき負けたのわかる気がします。
「岡、庄司。で、これが俺の幼馴染兼彼女」
進藤さんがすごく不機嫌そうな顔をしたまま紹介してくれた。
それにしても、なんかお似合いなんだよなー。
たしかに進藤さんにはもったいないぐらいの美少女なんだけど、なんかしっくりきてる。
二人がならんでも違和感が無い。自然な感じがする。
それに、なんだかんだ言っても進藤さんは外見は背も高いしカッコいいし。
ならんでも釣り合い取れてるんだよなあー。
進藤さんはどうしてもやっぱり不機嫌らしい。さっきからずーと怒った顔のまま。
「ひかる。機嫌直して。今日お弁当作ってきたからね。ひかるの好きなもの一杯入れたからね」
お願いポーズがみょうに似合って可愛いですけど、
これで不機嫌なままでいられる男はいないよなー、しかも手作り弁当、好物入!!
案の定、進藤さんはしぶしぶ「わかった」って頷いている。
すごい藤崎さん!あの進藤さんをすでに操縦している。
部長さんも部員さん達もほっと一息ついたらしい。
「助かった・・」って呟きが聞える。
こうなることがわかっているならあんな景品出さなきゃいいのに。
あれ? 昨年のミス○○のキスってことは藤崎さんって。
「ねえ、本当に私これつけなきゃダメ?」
藤崎さんが部長に嫌そうな顔をして尋ねている、手にはたすき。
「当然!!うちの部の売りの1つ」
部長さんが当然とばかりに言った言葉を聞いて、進藤さんがじろりと睨み付ける。
「あ、いや。折角去年名誉あるタイトル取ったんだし、な」
部長が慌てて言い換える。
売り扱いしたら殺されるとでも思ったかもしれない。
「私も副部長!!ぐらいでよかったのに・・・」
なんていいながら付けたたすきには『昨年度ミス!!今年も本命!!』って書いてあった。
「なあ、岡。先輩達が言っていた有名美少女の名前ってたしか・・・」
「ああ。・・・・・ずるいよなー、進藤さん」
僕たちは頷きあった。
だって、有名美少女の名前は『藤崎さん』3年生でミス○○。つまりは・・・
碁の才能と美少女の彼女。どう考えてもずる過ぎる・・・・・
「・・・不公平だよなー」
僕達はため息をついた。ちょっと浮かない顔をしていたかもしれない。
「どうかした?あ、お弁当ね二人の分も作ってきたのよ。美味しいかは保障しないけどね」
ちょっといたずらっぽく笑った後。
「もうすぐ開園だからよろしくね。頑張ってね」
と言って、にっこり笑いかけてくれた。
僕達は思わず「はい!」って答えながらわかった気がした。
進藤プロの強さのひけつ。
この笑顔が傍にあったら、いくらでも頑張れちゃうよなーって。
あれ?でも待って?そうするとトウヤさんは?
まさかトウヤさんの片思い?
「・・・・・・・・・・・・・」
無言で顔を合わせた僕達だった。