始まりの少しだけ - 7 - 



進藤が「すっげー美人を紹介してやるよ」とニヤニヤしながら言ってきた。
なんでも、藤崎さんの高校に教育実習で来ていたらしい。
その先生の大学に指導碁に行くから、一緒に行かないか?と誘われたのだ。


以前、進藤を含めて数人の男子で好みの女性の話をしていたとき。
「進藤はどんな女性がいいんだ?例えば、美人って思うのどんな感じだよ」
って質問にタドタドしく答えた結果。どうも進藤は日本美人が良いらしいことが判明。
藤崎さんとはまったく違うタイプだから正直びっくりしたのだけど。

「じゃあ、可愛いって思うのは誰だよ」
という質問に、進藤は「えーと」と考えだしたけど・・・
きっと誰かが頭に浮かんでしまったのだろう、いきなり慌てだして「あー」「えー」とか言って結局何も言わなかった。
まあ、俺的には進藤の脳裏にどんな子がいや誰が浮かんでいたのかは何となくわかるけどな。
とにかくだ、進藤は「綺麗な人」という話なら結構具体的に話す。
どうもこれっていうのが決まっているのかもしれない。
で、今回その美人さんを紹介されたのだが。




なるほど、進藤が言っていた美人像そのものかも知れない。
進藤は得意げに紹介して、しかもその美人さんが離れた隙に
「すごいだろ!俺が知り合いになったんだからな!偉いだろう!!」と踏ん反り返って自慢までしていた。

まあ、確かに偉いから。
「よくやった!進藤!!」
と言っていたら、隣で門脇さんが。
「いや、確かに美人だけどなー。進藤君の幼馴染もそうとうだぞ。
今でも十分可愛らしいけどな。あと数年経ってみろ、かなりの美人になるぞー」
と感心したように言っていた。

あー、門脇さんの馬鹿。
俺は恐る恐る進藤の方に視線を移すと、進藤はジーと門脇さんを見つめた後、
スタスタと立ち去って藤崎さんのほうへと行ってしまった。

「俺は何か不味いことでも言ったか?」
「いえ、まあ、ちょっと・・・」
門脇さんにしてみれば、客観的に思ったことを言っただけで、深い意味なんて無いのだろうけど。


進藤を見れば、藤崎さんに近づいた後、何かを楽しそうに話していた。
相変わらずの仲の良さだ。
それを見た門脇さんが「なるほど、若いね」と笑い出したが、話はそれだけでは収まらなかった。


進藤がこちらを振り向き、藤崎さんの耳元に顔を近づけて何かを話し、
藤崎さんはびっくりしたように俺たちの方を見つめて、かすかに顔をしかめる。

その後、二人は何かを少し話していたみたいだけど。
ふと進藤がこちらをまた振り向いて、そして、にやーと悪戯っぽい笑顔を見せた。


「あれは、何だ?」
となりで門脇さんが不思議そうに言っているのが聞こえた。
「こいつは俺のってことじゃないですか」
まったく、いちいち見せ付けなくてもいいだろうに。
何を言っているかは知らないけど、今更あの二人の間に入ろうなんて思わない。
まったく、変なところで子供じみたことをするんだ、あいつは。
そう思って俺は呆れてため息をついたのだけど。


気の毒なのは門脇さんだった。
その時進藤が藤崎さんに何を言ったのかは知らないけれど、
門脇さんはこの日からしばらく藤崎さんに思いっきり警戒されてしまっていた。



門脇さんが苦笑しつつため息をついていたのは、言うまでもないだろう。





はい、おまけです。 あの直後の二人の様子でした。 そして、『気の毒!門脇さん編』です(^_^;) こっちの設定の進藤君は少し大人しいですね。 でも、性格はちょっと悪いのです(^_^;)

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