誕 生 日 ?!
◆ 18歳  その頃の進藤家編 ◆



目の前で妻が機嫌よさそうに昼食の仕度をしていた。

「あなた。ヒカルは夕飯いらないから、午後は2人でどっか出かけましょうか?」

珍しくうきうきとそんなことを言うなんて、よほど機嫌がいいらしい。

「どうかしたのか?」

そう聞くと妻は目の前に来て、うれしそうに話し出した。




「ヒカルがあかりちゃんと出かけたんです。

あかりちゃんの誕生日のプレゼントを買いに行くんですって。二人とも今年18歳になるんですねー」

その少女は小さい頃からの息子の友達で、気がつけば恋人になっていた。

「18歳と言えば、結婚もできるんですよ。

あかりちゃんがお嫁に来てくれるのも近いかもしれませんね。楽しみだわ」

にこにこ嬉しそうに話しているが・・・

「おい。いくらなんでも気が早いだろう。2人はまだ子供だぞ。

ヒカルはともかくあかりちゃんは確かまだ高校生だろう?」

まったく気が早すぎる。2人はまだ子供だ。

第一、藤崎さん夫妻が許すわけがない。

「あら、あなたはあかりちゃんに何か不満でもあるんですか」

妻は急に機嫌を損ねて軽く睨みつけてきた。

「そうじゃなくて、2人はまだ子供だ。この先どうなるかわからないだろう。

お前がそんなに焦ってどうするんだ」

妻の先走りを軽く諌めたつもりだったが、妻は逆に真剣な顔で言い返してきた。




「ヒカルが笑うんです」

「?」

「ヒカルがあかりちゃんの前だと笑うんです」

「・・・・」




「あの子、碁のプロになってからいつも気を張っていて、見てて痛々しかったわ。

勝負の世界だから仕方ない、と言われてもそれでも可哀想で。

あの子はまだ子供ですよ。プロになった時なんてまだ14・5の・・・。

普通の子ならバカ騒ぎして笑って・・・。

でも、またあかりちゃんと会うようになってから、あの子笑うんです。

ちゃんと年相応の顔をするんです」

真剣な顔で妻は語る。

「だから・・・。あかりちゃんには絶対にお嫁に来てもらわないと。ダメなんです」

息子の真剣な前を見つめる瞳が浮かぶ。あいつもあんな顔が出来るようになったのか、

と私は息子の成長を嬉しく誇りに思っていたのだが、妻にはそうは思えなかったらしい。

まあ、私より妻の方が息子と接しているのだ、私が見えないところも見えていたのかもしれない。




「あかりちゃんはとてもいい子ですよ。可愛いし素直だし。

第一、ヒカルを好きでいてくれているんです!!

それにあかりちゃんを逃したら、ヒカルに次なんてありませんよ。

ヒカルにはあかりちゃん以外、女の子と仲良くなったことなんて今まで一度もないんですからね!!」

あかりちゃんが素直な可愛い女の子なのはもちろん知っていた。

なんと言ってもヒカルの小さい頃からの一番の友達だ。

しかし、そう言えば息子の口からも妻からもあかりちゃん以外の女の子の名前を

聞いたことが無いかもしれない。




「いいですか。だからあなたもそのつもりでいてくださいよ。

私はあかりちゃんにお嫁に来てもらえるなら何でもしますからね!!」




妻が目の前で固い意思を持って宣言する。

脳裏には先日あったときに挨拶してくれた可愛らしい少女の姿。

その少女を嬉しそうに見つめる息子の姿。

息子はもう自分を癒してくれる大切な存在を見つけたのだろうか?

そんなに成長したのだろうか・・・




「あー。早く来てくれないかしら。そうしたら正式に私の娘になるのに」

あかりちゃん可愛いから買い物とか一緒に行って・・・と未来の夢を嬉しそうに語りだす。

「孫も可愛らしいでしょうねえ」

もう妻の心は幸せな未来絵を描いている。




まったく、息子のためなんだか、自分のためなんだか・・・

まあ、ヒカルが18歳になったらというのはいくらなんでも早すぎだとは思うが。

いつか娘になってくれれば・・・

息子のためにも、妻のためにも。




さて、こんなものを書いてしまいました。 何故にというと、浮かんできてしまったのと、説明補足編って感じでしょうか? そんな訳で、美津子さんはあかりちゃんは絶対に将来の嫁!自分の娘同然!!と 今から思ってしまっております。 お父さんもそんな妻に感化されて、いずれ将来の娘!!と思ってしまうわけです。 娘だから、お正月にあかりちゃんの写真を嬉しそうに撮っているんですよ。 「いやー。娘みたいな子なんですよー」と会社で自慢してしまう正夫さんがいるわけです。 あかりちゃんはとっても可愛いしね。 あー、なんで私ここまで想像してしまうんだろう・・・(ーー;)


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