翌朝。帰宅していたあかりさんがまた来てくれた。
でも、あかりさんは一人ではなかった。
「金子―!!」
進藤がびっくりした声を上げる。
玄関先に立っていたのは、背の高い女性。黒くて長い髪を後ろで一つに束ねていた。
「進藤。あんた、あかり一人に欠食男児4人と大食漢の食事作らせていたんだって」
欠食男児・・・・
「あかりと久しぶりに会って買い物でもと思ったら、
連休全部まかないしているから会えないっていうじゃない。
で、聞いたら5人分ですって。あんた何考えているの」
ジロリと睨む女性。
「だから、あかり一人じゃ大変だから手伝いに来たのよ。おじゃまするわね」
そう言いながらくつを脱いで堂々と上がってきた。
「えっと、塔矢君?始めまして、金子正子です。じゃあ、台所借りるわね」
塔矢を見つけて、てきぱきと挨拶して、
なんか力強そうな腕で重そうな荷物をしっかりと持ち上げた。
「あかり。台所どこ?」
「あ、こっち」
男達4名が唖然としている間に、さっさとあかりさんから台所の場所を聞いて
すたすたと廊下を歩いていく。
そしてふと気がついたように振り向いた
「進藤。この借りあとで返してもらうわよ。」
「まじで!」
進藤が後ろでそう言っているのが聞えた。
その後、
「やっぱりプロってすごいわね。そこでそういう手が出るなんて。勉強になるわ」
金子さんが塔矢と社との検討を眺め、感心しながら落ち着いた口調でそう述べていた。
塔矢の知名度や外見などを全く気を止めず、碁の内容に素直に感心された塔矢は
なんか照れていたように見えた。
塔矢君と金子さんの出会い編。
一応、中学時代に顔は合わせているようですが、
ちょっとなのであまりお互い印象に残っていないかなーと。
ちなみに、男の子達はみんな重い荷物を持った女の子をほおって置く子達ではありませんが
(越智君なんてお坊ちゃまだし、そこら辺はしっかりと躾けられてそうです)
あまりにも金子さんが堂々としていて、思わず声をかけそびれてしまったのです。