フィーメンニンは謳う
◇ もしかして・・・ ◇


「ねえ、リーナ。髪を結ばないなんて珍しいわね」

寝坊?まさかリーナがねぇ、と不思議そうに友人が私を眺める。

「あ、これは・・」

いつもならアップにされている髪を今日は降ろしてきている。だって・・

「ねえねえ、もしかしてユリウスの好みとか?」

ニッコーと笑って友人がからかうように言うから、思わず赤面してしまう。

「え!本気で」

友人達はかなりビックリしたようだった。

私がそういう風に彼の好みに合わせるタイプとは思わなかったみたい。

でも、アップにするとユリウスは機嫌悪くなるし・・・




「でもまさかねー。ねえ、ちょっと!いつのまにそうなったのよ!!」

「前からユリウスってリーナを良く見ていたわ、そういえば。ねえ彼から言われたの?」

ユリウスと付き合うことになって、私は友人達から質問攻めにあっている。

「あの、まあ、いろいろとあって・・・・」

何があったかなんて説明できるわけが無い。

「やっぱり休みの間何かあったのね!」

「それは・・・・」

実は別世界で妖精の女王様達と冒険の旅をして来ました、なんて言える訳が無い!!

私がこんなに困っているのに、ユリウスは机に座ってぼぅっとしている。

彼を質問攻めにする人はいないなんてずるすぎる。

「・・・ユリウスに聞いて」

だから、にっこり笑って誤魔化してみようかと。

「リーナ〜」

あの鉄仮面男に質問なんてできない!と皆が困った顔をする。




恐る恐る友人達がユリウスの方を振り向けば、

一応聞いてはいたのかユリウスが無言でこちらに視線を送る。

「あのー、ユリウス」

「・・・・・」

「な、何でもないわ」

友人達早くも撃沈。判るわー、その気持ち。私も慣れるまでそうだったし。

だけど・・・




「従兄妹同士で幼馴染なんだ」

淡々とユリウスが事実を語ると、友人達はびっくりしたようだ。

「まあ、どこかの誰かは暢気に記憶喪失になってるし。俺の母親は幼い頃に居なくなったし。

リーナ達は引越して音信不通になってたから」

何気に重いことをしれっと口にする。

「わ、忘れてて悪かったわよ!でも、ちゃーんと思い出したから」

幼い私が抱えるには重過ぎた記憶。だから自分を守るために忘却されていた記憶。

彼の傍まで行って慌てている私に彼は優しい瞳を向けて、

そしてゆっくりと私の柔らかい髪に手を伸ばした。

「もう、大丈夫?」

記憶を思い出したことで強いショックを受けた私をまだ心配しているのだろうか?

「大丈夫よ。思い出せてよかった」

私が笑うと彼も安心したように柔らかく笑ったのだが。






後ろで友人達が硬直しているのがわかった。

そしてこそこそと小さな声が聞える。

「見た?見た?ユリウスの笑顔よ」

「すごく優しい顔もできるのねー」

「リーナの髪に手を伸ばしたりして!」

「結構いいかも・・・」

顔を染めて頷きあう女の子達。




「頭だってめちゃくちゃ良いし」

「良く見れば結構かっこいいかも」

「無口だけど、騒がしいのより良いわよね」

「第一、自分にだけ優しい笑顔って!!」





「「「やっぱりいいかも・・・」」」





いままで散々変わり者扱いされていた彼は女の子達から見直されつつあるらしく・・・

そう言えば、この人って・・

ファーはともかくとして、あの『ラミアドナ』にまで気に入られていたし。

マジマジと彼を見つめる。

もしかして、この人・・・・実はもてるのだろうか?






帰り道。

「ユリウス」

ムスっと私が顔をしかめて名前をよぶ。

彼は無言でため息をついた。

彼が悪いわけではないのだと思うけど・・

「知らなかったわ。結構もててたのね」

帰る寸前、一年下の女の子が私たちの前に現われた。

ふわふわの髪が似合った可愛らしい女の子。

「ユリウス先輩。リーナ先輩と付き合ってるって本当ですか?」

真剣な瞳で彼と私を見つめるその子。

ユリウスが無言で頷くと、大きめの瞳に驚愕と悲しみの色を浮かべ、

そして軽く頭を下げて立ち去っていった。

「誰?」

と聞けば、本気で判らないらしく不思議そうに顔を傾ける。

そしてしばらく考えて・・

「ああ、しばらく前に足を挫いていたから家まで送ったかも・・・」

思い出した!とすっきりした顔をしたが、

すぐに「それだけだよ」と何でもないことのように言っていた。





「リーナ」

彼が困ったように私の名前を呼ぶ。

あれから私は機嫌が悪い。

「リーナ。ほら、あの並木道」

気がつけば、すでにあの並木道についていた。

あの冒険のすべてが始まった場所。




「花畑、なくなっちゃったね」

すでに整地されてしまった土地。

「あの子達大丈夫かしら・・・」

大切な仲間たちの姿が心によぎる。

そのときの思い出とともに。






「大丈夫だよ」

彼が花畑があった筈の土地を静かに見つめながらゆっくりと言う。

そして、そのまま視線を私に向けた。柔らかいあの眼差し。

「きっと大丈夫」

無条件で大丈夫だと思えるようなそんな笑顔。

だから

「そうね」

私もそう言って自然に微笑む。




自分は何を怒っていたのだろうか?

彼がこんな風に笑いかけてくれるのは、今も昔も私にだけなのに。

彼は私をあんなにも優しい眼差しで見つめてくれるのに。

「ユリウス。ごめんね」

この場所の所為だろうか?彼らの思い出の所為だろうか?

素直に謝ることができた。





彼は安心したように微笑み・・

「?」

私を真剣にジッと見つめる彼に、私は小さく首を傾げる。どうかしたのだろうか?






不意に彼の手が私の髪に優しく触れる。


その手が柔らかく私の頬に触れた。


私を見つめる暖かい眼差し。




そして・・・・




私たちはあの並木道で初めてのキスを交わす。





だって・・・ 原作で2人はキスもしていなかったもので(^_^;) (口移しで薬は飲ませたらしいが、その場面は無いし・・・) だけど、原作のあのユリウス君のリーナへの眼差しは 言葉やキス以上に気持ちを語っていたと思いますがね。 そんな訳で書いてしまいました。 それと、ユリウス君はあのラミアドナにさえ気に入られていたので、 実は天然のタラシ君では・・・・ なーんて(^^) ちなみに、フェロール君も大好きです。 悲しい切ない想いがあるのに、それでも笑っている彼がいいのです。 そして、悲しいほど一途な彼が素敵なのです。 では、何か書けるか?といえば浮かんできませんが。 彼らの話は原作で綺麗に終っているので、あれでいいのではないかと。 さて、如何でしたでしょうか? 原作の柔らかいイメージを大切にしたかったのですが・・・ なかなか上手くいかないものです(^_^;)


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