西の善き魔女
◇ 月の過去 -4- ◇



「レアンドラ。ちゃんと考えるよ」





目の前には美味しそうな数々の料理が温かそうな湯気を上げていた。

暖炉には暖かく明るい炎が燃えていて、部屋の中は昼間のように明るかった。

フィリエルが隣で笑う、この暖かく明るい場所。





「フィリエルの傍に居るために必要ならば」





フィリエルという光の傍にいるためならば。

フィリエルを守るために必要ならば。





「考えるよ」





暗灰の瞳がまっすぐと前を見据える。その先にある暖かく明るい炎。

あの時もあの場所では暖かい大きな炎が燃えていた。



あの暗界頃、大人たちは何でもしていた。どんなことでもしていた。

例えどんなことでもやってのけていた。




あの暗闇、寒さ、痛み、恐怖、眼差し、裏切り、悲鳴、言葉、嘲笑、涙・・・・





そのすべてを覚えている。

あの頃のことは記憶に焼きついている・・・





「グラールを、世界を守らないといけないと言うならば・・・・」




フィリエルの傍にいるために。

グラールの体制を守らないとならないのならば

ブリギオンが邪魔だというならば






あの頃の焼きついた記憶・・・

そのすべてを使ってでも、利用してでも。




「守るよ」




あの頃、陥れる相手は貴族だったり裕福な商家だったり。

ただちょっと対象が大きくなっただけ

相手が国や派閥になっただけ。

ただ、それだけだ・・・・







ルーンは深い瞳でまっすぐと前を見つめる。

だけど、その先に映っているものは?

その暗灰の瞳に映っているものは暖炉の炎?それともあの頃の?






目の前で倒れていく人、血に濡れた剣、泣き崩れる女、笑う大人たち。

あの暗闇の中、彼はそのすべてを見ていた。




彼はそれまでいろいろな経験し、見て、聞いて・・

そのすべてを記憶に焼き付けている。



そして、彼はそこから博士の元に引き取られた。

そこで学んだ情報を集め、分析し、考えること。






「・・・・・必要だと言うならば」





いままで経験し、学んだことをすべて使って守る。

使ってでも守ってみせる。

フィリエルという世界を。

『ぼく』が・・




「守る」





ルーンは眼差しをレアンドラにゆっくりと戻す。



「レアンドラ。情報をくれないかい?考えるにしてもデーターが足りないんだ。

君ならもっているだろう?考えるのはそれからだ」




守ると決めた。

傍にいると決めた。

二度と失わない。

ぼくのすべてを使って守ってみせる。







「ルーン。考えてくれるの?」

フィリエルが嬉しそうに笑ってぼくを見つめる。

彼女がそう呼ぶからぼくは『ルーン』になれた。

その何よりも大切な存在に瞳を移す。




「もちろんだよ。君がいる世界を守るためだよ」




ずっと一緒に生きていくために。

この笑顔を守るために。

『光』を失わないために。








この暖かく明るい部屋の中で暗灰の少年を除き、明るく嬉しそうに笑うのは赤金色の少女のみ。

少年の「フィリエルの傍にいるために」という言葉に感動して嬉しそうに微笑む少女。

その少女に柔らかい眼差しを送る黒き少年。

微笑ましい恋人達がお互いを見つめあい二人の世界を作り出している中、

彼らの周りでは、暗灰の瞳の奥に、その言葉の影に、

重く暗い何かを感じ取った仲間たちが体を強張らせ静かに息を飲む。







 空に美しい月が浮かぶ夜、幸せそうな恋人たちの周りで何人かの若者たちが、

背中に冷たい何かが流れるのを感じ取っていた・・・・




一応、ルーン君が声に出した言葉だけを読むと、フィリエルのために頑張る! という微笑ましい内容だけど、その奥には・・・・というのを目指したのですけど。 なんかなー、難しい・・・・(>_<) もうちょっと暗くしたかったかな。 ルーン君が暗いですね(^_^;) でも、私の中でルーン君はこんな感じ。 きっと彼はどんなこともやってくれるでしょう。出来ることでしょう。 本気になった天才ルーン君に勝てるのはフィリエルちゃんだけなのです。 フィリエル(=ルーン)を敵と定めたメニエール猊下の未来は決まったも同然!なんて愚かな!! ところで、ルーン君の影に当てられた人たちを他所に、フィリエルちゃんだけは平気なのです。 いまさらルーン君の影なんかには負けません。 その影をも踏み越えて、前へ前へ!!突進あるのみ!!と思いたいのですが、 ただの鈍感??慣れ?うーん、原作でもそんな感じも・・・・。 まあ、フィリエルちゃんにはルーン君の影もまたほっとけない好きな部分なのでいいかな♪と。 さて、これらの話も暗いのですが、実はもっと暗いお話も浮かんでいて。 登場人物は・・・・大きな木の下の子供たち(オリジナルキャラですが) もしも、ルーン君があの子供たちと再会したら?というお話なのですが。 暗い上に凄惨なお話で、しかも長いのでやめておきましょう (なお、原作主要人物は殺しませんよ、当然) サード君にファー、ナイン・・・いつかどこかで形を変えてでもいいからオリ話作ろうかな・・・。 サード君のキャラは気に入っているんだよなー なんて、思いつつ・・・ゆとでした。


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