「和谷ずるいぞ!どうだった?可愛かったか?」
「いやー、見たかったなーあかりちゃん」
「何で進藤ばっかりそんなに恵まれてんだよ」
「くそー!俺も欲しい可愛い彼女」
和谷の部屋に響く数人の男性人の声。
「いやー、それがさ。進藤にはもったいないぐらいの彼女だよ。可愛いし、素直そうだしさ」
「そうだね。可愛らしいって感じの子だったね」
「料理とかも得意で美味しかったよ。良く気もつくし、進藤にはもったいなさ過ぎるね、確実に」
噂のあかりさんと面識のある和谷と伊角、越智の三人がそれぞれ感想を述べる。
いつもの和谷のアパートでの研究会。進藤ヒカルの彼女発覚事件から初の研究会だ。
そして話題の中心になっている人物は、当然みんなの質問攻めにあっている。
「そんな可愛い子といつのまに知り合ったんだよ!」
「え、幼稚園のときに・・」
「ほぉー、それからずっと付き合ってたわけか?」
「ま、まさか!ずっと仲の良い幼馴染で。付き合ったのは一年前ぐらい・・」
「いいなー、可愛い幼馴染かー。俺も欲しかったなー」
「可愛いだけじゃなくて、料理とかも得意なんだろう?」
「えっ!まあ、美味いかな。あいつの料理・・・」
初めは赤くなってタジタジだった進藤だったが、だんだんヘラヘラと嬉しそうに笑い始める。
「しかも、碁が打てるって?」
「あ、でも下手だから」
「下手でもいいよ。碁が打てること自体珍しいんだから」
「やっぱりお前の影響とか?」
「まあ、そうかな」
ヘラヘラヘラーと嬉しそうにわらって頭をかき出す進藤。ちょっと得意そうである。
「なんかいいよなー。ちくしょー。幸せそうに笑いやがって!」
「幼馴染だからだぞ!きっと普通じゃ捕まえられなかったって!!くそー」
部屋に飛び交う羨望と非難の声。
そしてさらに得意そうに笑う進藤ヒカル。
「小さい頃から一緒だったわけだ。いつから好きだったんだ?」
「えっ!いつからって・・・。なんか気がついたら傍にずっといたし・・・・。
あいつ小さい頃からいつも俺の後を追っかけてきてたから」
「なんだ?彼女の方が進藤君に惚れているのか?」
「「「うそだろー!!」」」
「な、なんだよ!それ!! えっと、そうじゃなくて・・・、いや、そりゃそうでもあるんだけど・・・。
もちろん俺だって・・・・、そうじゃなくてなんていうか・・・・」
だからさーと赤くなりながらも、少しずつ言葉数か増えてくる。
「た、例えば碁だってさ。俺が碁を始めたって言ったら凄くびっくりしてたけど、そのうちあかりも始めて。
白川先生の囲碁教室とかまで通ってくれたんだぜ。中学の時は一緒に囲碁部に入ったし、高校でも続けてくれてさ。
中学の時から俺が教えてやってるのに全然ヘボだけど、まあ、そこがあかりらしいっていうか。
でも、あいつと打つと気負いなく打てるから何か落ち着いてさー」
えへへ・・・と照れているくせに饒舌な進藤。
「料理もさ。始めはカレーとか簡単なものだったけど。学校の料理同好会みたいなのに入って俺のために覚えてくれて。
凄く上達して。それが結構美味いんだよ。俺の好みもちゃんと考えてくれててさー」
質問攻めにする余裕も無くなってきた。
「だからさー。なんかその・・・。近くにいるのが当然っていうか・・・。
居ないほうがへんっていうか・・・。いまさら失えないだろう?」
失えないだろう?って言われても・・・
「俺、あかりの幼馴染でホントラッキーだったよ。幼稚園時代の俺って見る目あったよなー。
あかりすごく可愛いし、外見じゃなくて性格がだぜ。
俺にはすげー勿体ないって思ってるけど、でもあいつは俺のだし」
俺のって・・・おい、進藤?
「だけどさー。あいつは俺のだ!って言っているのに、いまだにあかりに近づいてくる男がいるし。
二人で歩いていても、周りの男どもがあかりをちらちら見るんだぜ!人の女を見るんじゃねー!って感じだろう?
あかりのやつは鈍感で、全然そんなのにも気がついてないし、俺ばっかりがハラハラしちゃってさ」
・・・・・・
「まあ、あかりのそんな性格も可愛いんだけど。素直だしさー。それに凄くやさしいし。
俺の碁もちゃんと応援してくれてんだぜ。
大切な手合いの前日なんか「頑張ってね」って応援してくれたり、俺負けられねーって思うんだよ。」
いつまで続くんだ?
「あいつ本当に可愛いけどさ、特に笑顔が一番可愛いんだよ。あ、あかりがいくら可愛いからって手を出したりするなよ!
あいつは俺のだからな、そんなことしたらただじゃおかないからな!!」
一応、最後に牽制だけは忘れないらしい。
「よかったな、進藤君。幸せじゃないか」
他の人が呆然としている中、ただ一人にこにこと微笑みながら進藤の怒涛の惚気を聞いていた門脇さんが
にっこり笑いながら進藤に話しかける。
さすがは年の功だと全員が尊敬の眼差しを送る中、進藤はそんな周りの様子をまったくわかっていないようで、
また赤くなってテレながら嬉しそうに笑う。
そして・・・
「ま、うん。ありがとう」
なんて幸せそうな笑顔で最大の惚気を言ってくれた。
そういえば、「進藤に彼女の話を聞きだすぞ!!」と俺たちが言っていたのを聞きとめた塔矢が
「頑張ってくれ。これからは君たちの番だ、健闘を祈るよ」と言っていたのを思い出す。
なんの事だ?と思っていたがこれのことか・・・
「何かバレてよかったかも。やっぱり隠さないっていいよなー。何でも話せるしさ」
進藤がにっこりと嬉しそうに笑うのを見ながら、
おそらくは門脇さん以外の全員が「いっそのこと知らないほうがましだったのでは・・」と思ったのは言うまでも無い。
別名『進藤君の惚気編』です。
書いていてかなり恥ずかしいのと、かなり気合を入れて書きました。
さて、どうやって惚気させる?とね(^_^;)
一応、佐為のことは話せないからこそ、バレたからにはあかりちゃんのことは一杯しゃべってしまう進藤君です。