目の前で嬉しそうに親友が笑う。
ついこの間この親友は辛そうに涙を流していたから、こう笑ってくれることはすごく嬉しいこと。
「よかったわね」
そう言うと、顔を染めて嬉しそうに頷く。その様子は文句なしに可愛らしい。
まったく、あのバカプロもやっと彼女の気持ちに応えたらしい。
この一年、ハラハラとじれったい気持ちだったからこれで一安心だ。
「で、予定よりちょっと早いじゃない?進藤君になんて告白したの?」
美紀がウキウキと身を乗り出す。
「それが・・・」
赤く照れながら、おずおずとあかりが状況を説明し始めた。
俺の彼女?いきなりそれなわけ?
「いきなり言われたから、戸惑っちゃって」
彼の方は付き合っているつもりだったわけ?
そう思って聞けば。
「んー。付き合っているつもりと言おうか・・・・」
あかりが首を傾げる。
「あんまり深く考えてなかったんじゃないかなー」
「・・・・・」
「木村君に送ってもらったらすごく怒っちゃって。俺のなの!!って」
俺のなの!!って。
あかりを能天気な態度でさんざん悩ませたくせに、
当然のように「俺の!」って自分のもの扱いって・・・
いいの?あかり。とそう思って彼女を見れば、嬉しそうに微笑んでいて。
「よかったー!!あかりよかったねー」
美紀も嬉しそうにあかりに笑いかける。
「ありがとう」
あかりは少し涙ぐんでいるようだった。
そりゃあ、一年も彼女同然なのに片思いという複雑な立場にいたのだ、うれしくて仕方ないのだろう。
「やっぱりねー。彼、絶対あかりのこと好きだと思ったのよ。
やっぱりめちゃくちゃ鈍感だったのだわ、自分の気持ちにもあかりの気持ちにも」
鈍感君、やっと自覚してくれたのねー。と美紀が笑って言う。
先ほどからあかりはずっと嬉しそうに笑っている。
美紀とデートに着ていく服の話なんて始まっている。
「あのね、今週末デートなの」
今までだってデートっぽいことはしていたけど、
付き合ってから初めて2人で約束して出かけるから緊張すると幸せそうに報告する。
「手握ってくれたんだ・・・」
嬉しくて嬉しくてしょうがないらしい。
そして、実は・・・とますます赤くなって報告する。
なんですって!いきなり!!
言い争い中にいきなりするんだよ酷いでしょ、ファーストキスなのに。
と拗ねながらもやっぱり嬉しそうなあかり。
でも、私は。あの、くそバカ。ノタクタ中途半端な態度をとっていたくせに・・・と、
あかりからは見えないように握りこぶしをつくる。
「うわー。鈍感君。自覚したら手は早いんだー」
と、美紀なんかは逆に感心してしまっているようだ。
「でもね。全然素敵じゃないから、やり直してもらうの」
にっこり笑って言うあかりに、私は首を傾げる。
ファーストキスってやり直しありなわけ?
「えー。そういうファーストキスもけっこう良いと思うけどなー。
でも、確かにあかりの憧れからはちょっとずれるかな。うん、やり直してもらいなよ。
いいじゃない、ファーストキスって覚えているの二つでも。表と裏って感じかな?」
美紀・・・・だからありなわけ?
そう、思いつつもあかりも美紀もキャアキャアと楽しそうにはしゃぎはじめている。
本当に幸せそうに楽しそうに、弾けるように笑っている。
まあ、少々気に入らないところはあるとしても、
あかりの長い片思いが実ったのだから嬉しいことには変わりはない。
文化祭に来るって言っていたからやっとその噂の彼に合える。
あかりがバカプロの所為で涙を流した分は何かを言ってやろう、
そう密かに思いつつ、あかりを見る。
相変らず幸せそうに笑っていた。
「あかり。本当によかったわね」
そう微笑んで言えば、あかりは本当に嬉しそうに晴やかな笑顔を私に向けた。
志保ちゃん目線です。
前3回があまりあかりちゃんに明るい笑顔をさせていなかったので、嬉笑いをさせてみました。
そうなると、当然付き合った直後の報告かなと。
嬉しい笑顔を表現するなら第三者目線だろう!!と思いました。
あかりちゃんのイメージが崩れてしまったらごめんなさい。
私の中ではあかりちゃんは尽くすタイプだけど、しっかりちゃっかりさんなイメージがあります。
あまり上手く表現できてませんがね。
ヒカルに自分を女の子と見てもらうために頑張る普通の女子高生にしたかったのです。
後書きが長くなりましたが、あと一話でこのシリーズも終る予定です。