憧れの存在?驚愕編-1-



文化祭が始まる前に女性部員が言っていた。『例外』っていうのがわかった。
老人会等に連絡していただけあって、来客の中にはご年配の人たちも多くいた。
またポスターを見たのだろうか?他校の囲碁部の人たちや社会人も来店している。
彼らは進藤プロの指導碁や僕達院生と対局を目当てにしてきたようだ。

そんななか、僕たちや進藤プロと互角な人気を誇っていたのが『あかりさん』だ!!
どうも高校生囲碁会では結構有名らしく(碁力ではなくもちろん可愛らしさで)
わざわざあかりさんと打ちにきた男子生徒もいるらしい。
「えーと」「むー」とか呟きつつ、手を口元によせ。真剣に考えている姿は本当に可愛らしく、
ほのぼのとしている。残念ながらちょっと覗いた感じでは碁力は今一みたいだけど。
進藤プロ目当ての人も、年配の人でさえ、あかりさんを見て目を見張っている!
あかりさんの目の前に座っている男の人は、嬉しそうにぼーとそんなあかりさんを眺めていた。



そうすると、当然・・・
ギリギリギリ・・・・。碁石を握り締める音が聞える。
恐る恐るとなりのテーブルを覗くと、案の定進藤さんが怒りを抑えながら碁石を握っている。
碁が始まると碁に怖いぐらいに集中する進藤さんがだ。
「あ、あの、進藤プロ?」
かわいそうなお客様の一人が恐る恐る声をかける。
進藤さんの手が止まっていたのだ。
「あ、いえ。すみません」
進藤さんは頭を下げて謝って、一手を打つ。
そして隣の人の所に移って碁盤を見つめるんだけど。

顔がどんどん怖くなっていきますよ、進藤さん。やばいですって!!!
ちらりと今度はあかりさんの方を覗くと、さっきまでの人とは対局終ったみたいで笑顔で挨拶したあと、
次の人と打ち始めていた。
で、案の定、男の人はぽーと眺めているわけで。


ギリギリギリ・・・・・


部長さん!!いくらあかりさんが可愛くったって。売りになるからって!!
こんな怖い彼氏がいる人になんて事を!!企画間違ってますーー!!
はっ!!まさか進藤さんいじめなのか!!それにしても、進藤さん!!独占力強すぎですー!!
そして、とうとう独占欲の塊の人には限界が来たみたいで・・・


「ちょっと失礼します」
とお客様に挨拶をして、進藤さんはあかりさんの後ろに回った。
そしてちらりと碁盤を見つめるなり、次の手を考えていたあかりさんの後ろ側から碁石をぱちり!

「え!?」
いきなり置かれた碁石に対局中の二人は目を丸くしてあかりさんの後ろの進藤さんを見つめた。
「どうぞ」
進藤さんはにっこり笑って対局者に次の手を促す。
・・・こわい、目が笑っていない。
「ちょっとひか!・・・進藤プロ、対局中になにするんですか!」
あかりさんが抗議の声を上げるが進藤さんは聴いてはいない。
早く打て!と存在全体で訴えている。迫力が違う、眼力が違う。本気の進藤さん。
「あ、はい」
被害者の対局者はあかりさんのほのぼのとした対局から背筋が凍るような恐怖の対局になってしまった。

震える手で碁石を置く
ぱちり
進藤さんは相手が碁石を置いたとたん、あかりさんの代わり碁石を置く。
「どうぞ」
鋭い視線で相手を促す。
碁盤を確認してみると、進藤さんの一手は容赦無しの一手で・・・

「ひかる!!」
たまりかねたあかりさんが立ち上がって声を上げる!
「お前ちょっと黙ってて」
そう言って進藤さんはあかりさんの肩に手をやり、無理やり座らせる。
そして、あかりさんの肩に手を置いたまま
「どうぞ」
と低い声で相手を促す。
震える手が碁石を置く。そして容赦ない一手が・・・
「どうぞ」
「・・・・・・ありません」



被害者の方がそそくさと席を立ったあと、
ぼーぜんとしていたあかりさんの腕をつかんで進藤さんは無理やり立たせ、
あかりさんの椅子を片手に取り、本来自分が指導碁をおこなっている所の
後ろに椅子を置きあかりさんを強制的に座らせた。

「ひかる、ちょっと、何!!」
あかりさんは訳がわからなくて、狼狽気味
「お前そこ座ってろ!!動くな!気になってしょうがないだろう!!」
進藤さんはあかりさんに乱暴にそう言い放つと、
テーブルの前であっけに取られた様子の指導碁のお客様達に対して丁寧に頭を下げた。
[お待たせして大変申し訳ありませんでした。では、○○さんからでしたね」
と、まるで何事も無かったかのように指導碁を再開した。

あかりさんはもちろん。僕たちも、指導碁のお客様もその他のお客様もみな呆然としていた。
今、進藤さん、何した?えーとあかりさんを自分の後ろに固定して「動くな!」って進藤さん!!
恥ずかしくないんですかー!!人前で、しかも注目の中!!!
進藤さんに目をやると平然としている、というかさっきよりも安心したらしい顔が穏やかだ。
あかりさんといえば真っ赤になった後、大仰に諦めたかのようにため息をついた。
いいんですか?あかりさん。こんな自己中な彼氏で・・・・
思わず、あかりさんを止めたくなってしまった・・・・


「いやー、これはすごいですなー。進藤プロともなるとやっぱり恋人もすばらしいですねー。
 こんな美人の可愛らしいお相手がいたんですなー」
「こんな美人さんじゃ、進藤プロが落ち着かない訳がわかりましたよ」
「いや、うらやましい。進藤プロもそういえば18歳。青春の年頃でしたな」

ほ・ほ・ほ・・・・・
指導碁中のおじい様方はさすがに年の功か、すぐに立ち直り、
あかりさんをよく見たあと、うん、うん、と楽しそうに笑っていった。

「進藤プロも心配なはずじゃ」
「いやいや、進藤プロ以上の人などそうそうはいないて」
「進藤二世の誕生が待ちどうしいですなあ・・」
ほよほよとお爺さん達の会話が続く。なんかすごく楽しそうなんですけど・・・・

あかりさんは恥ずかしいらしくて(当然だろう)、真っ赤になって俯いてしまっている。
穴があったら入りたい・・・そう思っているかもしれない

「お褒めにあずかりまして、光栄です。自慢の彼女ですから」
進藤プロは大胆にもにっこり笑ってうれしそうに答える。
どうもおじい様方ならあかりさんを眺めようが、話そうがあまり気にならないらしい。
と言おうか、自慢したげだ。

「可愛いだけじゃなく、性格もいいんですよ」
悪びれず、続ける。進藤さん!!こんなところで惚気るな=!!!
「では、続きよろしいですか」
思いっきり惚気た後、真剣な表情にもどして碁を続けるなんて、
ある意味すごいのかなんなのか?
とにかく僕なら気持ちが切り替わらなくて、その後碁なんて打てなさそうだけど。







文化祭開催です。


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