夏祭2

会場はやっぱり祭りらしく、道の両脇には多くの屋台が立ち並び、
赤やら黄色やらとピカピカとひかり、子供達がかけ歩き、金魚すくいのおじさんが声をあげて呼び込みしている。
大人から子供まで、楽しそうに笑いながら皆歩いている。カップル・家族づれ・友人同士等々。浴衣の女の子達も大勢いる。
それにしても、浴衣の女の子は大勢いるけど、やっぱり藤崎さんはその中でも特上品だよなー、
などと不埒なことを考えたり。

それで、ふと彼らを見てみれば。屋台を指差しながらにこやかに笑って何かを話している。
周りのざわめきの所為であまり彼女の声が聞えないのか進藤はたまに屈んで彼女の顔に妙に近づいていたり、
目を合わせて笑いあったり。おい!本当にただの幼馴染か?どうみても、すごくいちゃついている様にしか見えないのだが、
しかもごくごく自然に・・・・

「あー、何か買ってたべない?」
奈瀬がそう言いだした。どうも奈瀬もあの幼馴染カップルに当てられたらしい。
「わ!やりー、食べようぜ!!さっきから腹減っちゃって!!」
嬉しそうに一番に反応したのは、やはり進藤だった。さっきまでいちゃついてたくせに、聞えてたのか。

で、結局じゃんけんして負けた男が買出しに行くことになった。奈瀬と藤崎さんと本田さんがここで待つ。
奈瀬が「えー、買ってきてよ、私達待っているから、ね」っと言いだしたからだ。
進藤は藤崎さんに向かって「財布・財布」と言って手をピラピラしている。
彼女は自分の巾着から財布を出して、進藤に手渡した。おそらく進藤の財布を彼女が預かっていたのだろう。
なんかその仕草が、熟練の夫婦みたいに見えた。
今日は当てられる一日なんだろうか?しかも進藤に?こいつだけは無いと思っていたのに・・・


一応、護衛役を勝ち取った本田さんと藤崎さんがにこやかに話していた。
どうも彼女はとても愛想が良いらしい。今日始めて会ったにもかかわらず、笑顔で楽しそうに話している。
かわいいわ、いえ、すっごくかわいいわ。
奈瀬は素直にそう思った。女性の自分からみても文句なしに可愛い。

「ねえ、藤崎さんと進藤って幼馴染なんでしょう?」
「はい、幼稚園からずっと一緒なんです。家も近かったし」
にっこりと藤崎さんは答えてくれた。

「囲碁も一緒に始めたの?」
「あ、いえ。ヒカルが先に。いきなり碁を始めるっていうからびっくりしちゃいました」
「でも、その後、藤崎さんもやろうって思ったんだ」
「あ、はい。私その頃いっつもヒカルの後ばかりついて行ってたんですよ」
くすりと照れたように笑って話す。

「いつも一緒だったんだ、ずっと?」
「え? いえ、ヒカルが院生に、特にプロになってからはそんなに」
すこし寂しげに否定していた。これは・・・・

「本田―。私、あれ食べたい」
いきなり本田に話を振って、追い払う。だって二人で話したいんだもん。
「で、あまり傍にいられなくて寂しかった?」
にこっと聞いてみる。

「え?」
「好きなんでしょう?違うの?」
えー!と顔をまっかにした藤崎さん。やだ、ホント可愛い。苛めたくなっちゃいそう。

「い、いえ、そんな。私達、本当に・・・・・ただの幼馴染なんですよ」
真っ赤になって手をひらひら振って否定した後、ちょっと寂しげに最後の言葉を紡いだ。
その複雑な笑顔は言葉よりも雄弁に彼女の心情を語っていて。

もったいない・・・・
正直そう思った。なんで、進藤な訳?幼馴染だからって。というよりも、進藤ってば何様な訳。
悔しいほど碁の上達はやくて、天才的な碁のセンスがあって、そればかりか、こんな可愛い子に好かれちゃって。
恵まれすぎているわ!! 何故か進藤に対しての怒りがフツフツと湧いてくる。だから思わず

「あんな碁馬鹿・・・」やめときなよって言いそうになった時。
「ねえ、ねえ、彼女達2人? 二人ともすごくかわいいね。よかったら俺達と回らない?」
なんて言ってくる馬鹿男達が近寄ってきた。

「あの、いえ、結構です。待ち合わせなんです」
藤崎さん?愛想が良すぎるのも問題だと思うわ。なんでにこやかなわけ?
軽くため息をつきながら、私は思いっきり男達をにらみつけてやった。

「結構よ」
大抵の男達はこれで引いていくのに、この馬鹿達はしぶとかった。
「本当に?連れって男?うそじゃないの?じゃあ、来るまで一緒にいていい?」なんて言って離れようとしない。
「本当に来ますので、困ります!」さすがに藤崎さんも困った顔をしている。

しつこいわよ!って怒鳴ろうかと思ったときだ。非常に目つきの悪い、
浴衣を着た迫力のある男が近寄ってきて、馬鹿男達を一睨みした。
男達はちょっと青ざめた顔したあと、「じゃ、ぼく達これで」なんて言って立ち去ったのだが。
新手なわけ、ちょっとさっきの男達よりたち悪そうだわ。どうしよう、早く皆帰ってきてよ。
さすがの私もちょっと腰が引け気味。藤崎さんいざとなったら走るわよって彼女を見たら、
あきらかにホッとした顔をしていた。何?知り合い?

「なんだ、旦那はいないのか?」
男は彼女にそう聞いていた?旦那?やっぱり新手のナンパなわけ?


「あー、本田さん!何でココにいるわけ?」
たこ焼き・お好み焼きを持った進藤が護衛役立ったはずの本田を見つけて慌てて声をかけた。
「いや、奈瀬にこれ食べたいって言われたから」
彼が並んでいるのは、中国のお焼きみたいなものらしい。

「えー、ってことは今二人だけ?」
進藤はちょっとあせっているようだった、俺や越智の顔をいや正確には手元をみて軽くしたうちする。
どうも自分のお好み焼きを押し付けようとしたらしい。生憎、俺達の手元も一杯だ。

「本田さんが傍にいれば大丈夫だと思ったのに。なんで離れるんだよ!!」
そう言い放つと、お好み焼きやたこ焼きを落とさない程度の全力疾走で走り出した。
「お、おい!進藤!!」
俺も慌てて走り出す。と、言ってもから揚げがこぼれそうになるのでスピードが出せないが。
それでも進藤を見失わず、走っていると前方に彼女達が見えてきた。悪かった進藤。
お前があせるわけだ。あの藤崎さんとあの奈瀬のコンビだ、二人にするのは危険すぎた。
案の定、今彼女たちの前には知らない男が二人立っていた。


すみません、まだまだ続きます

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