今日は我が妹とその幼馴染のお祝い会だ。
妹は当事者なのに、早くから会場となるその幼馴染の家にお手伝いと称して出かけている。
お手伝いがメインなのか、そこにいるはずの幼馴染に会うのがメインなのか。
母は朝から幾つかの料理を作成中。
父親はさっきほどから手土産にするお酒を吟味中である。
2人とも妹がさっさと嬉しそうに出かけていったのを別段気に留めていない。
というか、「早く行きなさい!失礼の内容にねー」と逆に急き立てて送り出している。
まあ、当然といえば当然か。
だって、その幼馴染は妹の恋人でもあるのだから。
そして、両親にしてみれば・・・・
「もちろん嫌じゃないけど。だけど・・・」
妹自身、少々戸惑い気味である。
気持ちはわからなくない。だって両家の両親共に公認というか、当然というか。
もちろん、妹は嫌がっているわけではない。嬉しく思っていると思う。
ただ、あまりにも当然のように思われていて・・・・
つまり。
両家の両親共に。2人の結婚は当然の未来と思っている節が・・・
「まだ先のことはわからないけど・・」なんて言うこともあるけど、結局は。
そんな訳で本日も。
「いやー!進藤さん。うらやましい限りですなー。ヒカル君は立派に成長されて。
日本の代表として外国の選手と戦うなんて、本当に凄いことですよ!」
「いや、いや、そんなことは。18歳以下の大会でしかありませんしね」
「またご謙遜を。先が楽しみですね。いやタイトルっていうんですか?
いずれは取ると言われているそうじゃなですか。立派ですよ」
「まあ、狭い世界ですから。それよりも藤崎さんこそ、
可愛らしいお嬢さんが2人もいらして。うちは息子1人ですからね、うらやましいですよ」
「いや、娘なんていつかは家をでてしまいますからね。寂しいですよ」
父親同士、酒を飲み交わし既に出来上がってしまっている。
「本当にヒカル君は随分と背も伸びで格好良くなって。良いですわねー」
「あらー藤崎さんのお嬢さん2人とも美人で可愛らしくて。
やっぱり娘さんって華やかでうらやましいですわー」
こちらでは母親2人で手にお酒を持って、朗らかに笑っている。
で。
真ん中では、妹とその彼氏が料理を食べながら楽しそうにいちゃついている。
どうやら食べ盛りの彼氏に自分が作った料理を勧めているようだ。
そして褒められて嬉しそうに笑っている。
まあ、あんな姿を見ていれば両親達の考えも当然なんだろうけど・・・
「いや。息子さんは羨ましいですよ。
息子が成人したらこう酒を飲み交わすっていうのには憧れますよ」
父親が酒を片手にため息をつく。
「うちの愚息で良かったら、いつでもお貸ししますよ」
おじさんが赤い顔で笑いながら、父に酒を注ぐ。
「おっと、すみません。本当ですか?」
「だってねー。いずれはですからねー」
「いや、そうでした。それは楽しみが出来ましたなー」
2人してあはは・・・と笑い出す。非常に上機嫌だ。
「大学合格して、次は成人式ですわねー。やはりあかりちゃんは振袖を?」
「ええ。女の子ですしね。ヒカル君には袴ですか?」
「男の子の袴は選ぶのつまらなくて。いいですわね、振袖は華やかで・・・」
「では一緒に選びます?まだ少し先の事ですけど・・」
「え?よろしいのですか?」
「あら、だってねー。いずれは、ですからねー」
「まあ、そうですわねー」
おほほほ・・・・と母親2人は笑いあう。非常に楽しそうだ。
真ん中の2人は、どうやら両親達の話が耳に入ってきたみたいで。
ちょっと顔を合わせて苦笑している。
だけど、ヒカル君は随分と嬉しそうに見えるけど。
あかりは反対にちょっと困った感じだ。
「娘さんといえば、バージンロードを一緒に歩くというのにも憧れますねー」
「はは、いずれそういう日が来ると思うと寂しいですよ」
「藤崎さんのところは2人おりますし・・・」
「進藤さん。これだけは譲れませんな」
父がふと笑い顔を納めて真顔で言うと、おじさんは少々残念そうにうな垂れていた。
「いっその事、着物2人そろえます?」
「あら、それも良いですわねー」
「だってねー」
おほほほ・・・・・
「いや、嫁に出す父親は寂しい限りですよ」
「はは、私はその日が楽しみですなー。あかりちゃんはとても良い子で」
「自慢の娘ですよ。頼みますよ・・・」
父はどうやら半分泣きそうである。
「でもねー。ホントあかりに関してはあまり心配しないで済みそうで。嫁に出すといっても・・・」
「任せて下さい。心配なんて要らないですわ。
ホントあかりちゃんはいい子で。うちの馬鹿息子には勿体無いぐらいで・・・」
両親達はそうとう出来上がって来たようだ。
さっきまでの馬鹿騒ぎから、今度は湿っぽくなってきた。
まだ随分先の話だろうに・・・、
というか正式には決まってないはずなのだけど・・・
案の定、あかりは戸惑った顔で両親達を見つめている。
そりゃ戸惑うでしょう。だって2人は未来を約束した訳じゃない。
なんだか、そうなることが当然といった感じに、
嫌じゃないけどどうしていいかわからないのだ。
まあ、確かに交際を反対されるよりは良いだろうけど、
ここまで肯定されるというのも・・・
羨ましいのやら、なんなのやら。
で、ヒカル君といえば。
さっきからにっこにっこと上機嫌だ。
ヘラヘラと嬉しそうにあかりを見つめたりしている。
ああ、どうやらこっちはこの両親達の流れが嬉しいみたいだ。
あかりを見つめるその顔に「俺のもの」とでも書いてありそうだ。
そして、そんな中事件は起こった。
これはもう起こるべきして、起こったというべきだろう。
久しぶりにアップした内容がこれです。
甘い話では決してありません。
お姉さん目線の両親‘sがメインです。