お 預 け   −3− 


そして・・・・。

「ヒ、ヒカル君。君は・・・・」

怒りに燃える父。

あーらら。

ほらヒカル君、世の中手順と段取りは大切なのよ。




で、結局。

「君はあかりの意思確認すらしていないのか・・・・」

低く唸る父。

「え?だって、ほら・・」

狼狽し続ける少年。

「しかも、こんな大切なことを、宴会の最中にこんなにも軽く言うなんて・・・」

「え、だって。さっきいずれは・・って」

「まるで、あかりが物みたいな言い方で」

「おじさん!俺そんな風に言ってないってば」

どうやら、やっとヒカル君にも事態の深刻さがわかってきたようだ。




「こ、こんな礼儀知らずに大事な娘がやれるかー!!」

父とうとう切れる。



「その通りですわ!藤崎さん!!」

立ち上がる、進藤母。

「こんな大切なこと。あかりちゃんにちゃんと伝えもしないで、あかりちゃんを泣かせるなんて。
こんな馬鹿な子に可愛いあかりちゃんはあげられません!!」

おばさん、そのバカ呼ばわりしているのはあなたの息子です。




「まったくです。申し訳ない藤崎さん。
こんな礼儀知らずな息子に大切なお嬢さんを頂くわけには参りません」

神妙に頭を下げる進藤父。




「えっと、あの・・・・」

段々青くなっていくヒカル君。



「本当に申し訳ない。よくこれから言い聞かせますから・・・」

「すみません。こんなバカ息子で・・・」




「ちょっと、お父さん、おかあさん!!まってよ!だって、俺」

「「お前は黙ってなさい!!」」



「本当にこんな子供で。まだまだあかりちゃんを頂くなんて、そんな。
せめてもう少し礼儀を判ってからじゃないと、申し訳ありませんわ」

「まったくです。今のままじゃとても家庭を築くなんてまだ・・」

「へ?まってよ。俺もう働いているんだって!それに、だって俺とあかりだよ。
おじさんとだって子供の頃から・・・、そんな今更・・」



つまり、小さい頃から家族ぐるみだったし、結婚当然の雰囲気の中、

そんな改まってご挨拶しなくちゃいけないのか?

ということをヒカル君は言いたいのだろうけど・・





「それと、これとは違うわー!!」

父さらに切れる。



「え、でも・・」

「絶対に認めん!!こんな礼儀も挨拶も解らない子供に!大体まだ早すぎる!!」

「な!なんで!!どうせ結婚するんだし!早くても問題ないだろう!」

「ダメだ!早すぎる!」

「あ、挨拶なら改めてちゃんとやるから!!おじさん認めてよ!!」

「まだ、ダメだと言っているだろう!!」

「ヒカル!お母さんもまだ反対ですからね!!あなたにはまだ早すぎます!
もっとしっかりしてもらわないと、
あかりちゃんは勿体無さ過ぎてまだもらえませんからね!!」

「な、かあさん。あかり似の孫が早く欲しいって言っていたじゃん!」

「ヒカル君!まさか、君は・・」

「え?おじさん、目が怖い・・・」

「ヒカル!早くって言ってもまだ早すぎるでしょう!
おばあちゃんになるのはまだ先で良いわ!
それより、ヒカルが一人前になるのが先でしょう!!」

「だから俺、もう何年も前から働いてるじゃん!」

「お母さんは精神的なことを言っているんだ、ヒカル」





あー、なんだか大変な事態に。

妹は何とか泣き止んで彼らの行方を戸惑いながら眺めている。

「どうしよう・・」と瞳で訴えてきたけど、ため息つきながら首を振って答える。

もう、ほっときなさいと。どうせ酔っ払い集団だ。

母は1人なんとか場を収めようと、「みなさん落ち着いて」と言っているけど、

無駄みたいだった。





「と、とにかく。俺、あかりと結婚したいの!!
絶対、あかりが大学行く前に結婚するからな!!」

「認めんと言っているだろう!!」

「だから、何でだよ!」

「まだ早い!2人ともまだ子供だ!せめて成人するまでは絶対に認めんからな!!」

「そうですよ、ヒカル!!あかりちゃんは成人式に振袖着るんですからね!」

「はぁ?」

「お母さん、あかりちゃんの振袖選ぶんですからね」

「ちょっと、待ってて」

「そうですとも進藤さん。あかりには振袖着て成人式に行ってもらわないと」




あー、私がスーツで済ましちゃったからかな・・・・




「きっと似合いますわー」

「当然ですとも」

親達の中でどうやらやっと話が反れたらしい。

また酒を飲み交わしつつ、あかりにはどんな着物が似合うだろうという話になってきた。

まあ、もともと酔っ払い集団だった訳だし。





「え?ちょっと、話まだ・・・」

ヒカル君1人取り残されたようだ。



「お、おじさん。話・・・。おじさん?」

声をかけようにも、耳にも入れてもらえない状態。




「う、うそだろう?」

つまり、彼は最低でも成人式が終わるまでお預けを食らったわけである。




もう少し続きます。



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