憧れの存在?衝撃編-2-



受付で事情を話すと、すんなり校舎の中に入れてもらえた。場所はすでに把握済みらしい。
色とりどりに飾りつけされていた廊下を歩いていると、何人かに挨拶される。
中には女性が「きゃー、進藤君よ」なんて言っているのもあるけど、
どうも進藤さんは普通に顔が知られているらしい、歩いていて不思議そうな顔はされていない。
結構指導碁に来ているせいかな?


囲碁部の部屋に来た。今日は生物室をつかわせてもらえるらしい。
部屋は大きいし、テーブルも大きいから丁度いいのだろう。
入り口には大きな看板とポスターが張ってある。

『プロ棋士の指導碁あります!!』
なるほど・・ってあれ?すごい景品があるけど・・・・

「おはよー」
進藤さんはポスターを見もしないで中に入っていく。
「すげーなー」
進藤さんは部屋を見渡して呟いた。準備はほぼ完成しているらしい。
和風チックに飾られているが、派手だ。生徒達は何故かハッピを着ていた。

「おはよう、進藤。今日はよろしく頼むよ。うちの部のメインだからね。
 で、そちらが言っていた院生の岡君と庄司君だよね。今日はよろしく」
部長さんはにっこりと挨拶してくれて、握手をしてくれた。
ちなみにハッピにたすきをかけて『我らが部長!!!』とでっかく書いてある。

で、にっこりと笑って3本のたすきを持ってきた。

『未来の本因坊!進藤プロ』『目指せ!プロ!!只今勉強中!!』『頑張ってます!!院生です!』

この3本である。先輩はこれ着けるのかーと少々嫌そうに自分のを受け取った。
で、問題は僕達だ。どちらにする?冷や汗かきながらお互いの顔を見合わせた。

「まさか、あいつも何かつけるのか?副部長!!とか?」
「それは見てのお楽しみだなー。あ、まだ藤崎来てないんだ。
 クラスの出し物の方の準備があるらしい」
「あ、そ」
先輩はちょっと残念そうにそうつぶやいた。

「あ、あの。僕たちは何をすればいいんですか?」
そう、聞くと。部長さんは丁寧に教えてくれた。文化祭の出し物は4つ。
『プロの指導碁』『トーナメント戦』『詰め碁』『院生もしくは部員との対局』
つまり、僕たちは来客と対局するらしい。
もし空き時間があればトーナメント戦の試合の検討もして欲しいとのこと。

対局はほぼ院生を希望されるだろうからよろしくねと言われた。
あー、でも例外があるわね、きっと。とは別の女性の言葉。例外?

「ところで、すごいですね。トーナメントの景品」
僕たちは部長さんにそう言った。だってすごいんだもん。

「へー、何もらえるんだ?」
進藤さんが興味深深と部長さんに問い掛ける。え!聞いてないんですかでも・・・

部長さんといえばすごく言いずらそうな、バツの悪そうな顔をしている。
「あー、進藤。怒らないで聞いて欲しいんだが・・・・」
進藤さんは眉をひそめてなんだよって問いただした。
と、そのとき、2年生の女子生徒が無言でチラシを手渡す。校内で配るやつだそうだ。


『トーナメント優勝者には景品と。なんと!女性ならば進藤プロもしくはトウヤプロの!
 男性ならば昨年のミス○○の祝福のキス!!!』


・・・・・・進藤さんの瞳が食い入るようにチラシをにらんでいる。
体が怒りのためか小刻みに震えている、手はチラシを思いっきり握り締めていた。

・・・・こわい。俺達は知らず後ずさる。でも、なんで・・・。

「ほっぺでいいからさー」
部長さんは一歩後ずさりながら言った。そりゃ怖いでしょう。進藤さんのあの目は

「聞いてないぞ・・・」
「藤崎の許可は取ってある・・・」

部長さんってすごいかも・・結構勇気があるんですね。
大人の棋士でもビビル眼光なのに。いやいつものそれ以上かも。


「俺は許可してない!!誰があいつにこんなことさせっかよ!!」


あいつって?自分のことじゃないんですか?えってことは、まさかトウヤさんのこと?
でも、それって・・・・・

「落ち着け!進藤!!」
ドアに向かって勢いよく歩く先輩。

「だれがさせっかよ!取り消してやる」とか呟きながらつかつか歩く。
ポスターを破るつもりかもしれない。

「もーすでに校舎中に張ってあるし。参加者も募ってる。いまさら止められないんだ!!」
部長さんが必死で止める。尊敬します部長さん。

「てめー!」
先輩は部長さんの胸倉を掴んだ。
「うわー、ダメです進藤先輩!!暴力はダメー!!」
謹慎処分うけちゃいますー!
岡と何人かの部員が進藤さんを後ろから押さえ込んだ。

「うわー、やっぱりかー。なると思ったんだよなー」
後ろから暢気な声がかかる。校庭での委員さんだ。

「てめー、知ってたなー!」
進藤さんが顔だけ、こっちに向けて怒鳴りつけた。
つまり体は取り押さえられている。

「部長―!だからやばいんじゃないかと言ったじゃないか。大丈夫かこれ」
のんきに進藤さんを指差す。
部長さんはゴホゴホと軽く咳き込みながら小さく頷いた。

「もうすぐ藤崎来るから、たぶん」
「進藤!ほら暴れんなよ。強制連行するぞ。ま、いいじゃないか。
ホッペぐらいなんだから。ケチケチすんなって」

「良くない!!あれは俺のだ!!」
暴れないからと止めに入った人たちを払いのけて言い放つ!!

俺のだ!って先輩!!いくら仲良いってそれは行き過ぎですよ!だって男同士だよ!
こっちの世界に帰って来てよー!!頭が訳わからなくなってきた・・・・


そんなことを思っていたとき、前方のドアががらりと開いた。
「ごめんね。遅くなっちゃった」
入ってきたのは、髪が長い女子生徒。

すげー美少女。俺達は怯えていたのも忘れて思わず見とれてしまった。
それほどの美少女。大きめの瞳が印象的な人だった。
その美少女は僕達を見つけて、優しく微笑んで会釈してくれたあと。
機嫌がめちゃくちゃ悪そうな進藤先輩の方へ歩いていった。

あの、危ないんです今!!

「おはよう、ひかる。遅刻しなかったね」
にっこり笑って美少女は躊躇せず進藤さんの前に立った。
って、いまひかるって呼びませんでした?

「俺は聞いてないぞ・・・」
「あ、もうばれちゃった?」
にっこり笑って美少女さんはごめんねって手を合わせた。

可愛いんですけど・・・

「聞いてないぞ!!」
「お祭だから、ね」
「俺は嫌だからな!!」
「そこを何とか。ほっぺだけにするから、ね」
「ほっぺだけって!!当たり前だ!!それ以上したら相手殺すからな!!」
「じゃ、ホッペだけならオッケーね」

あ、美少女さん、うまい!誘導勝ちです。

「そ、そういう意味じゃねー!!大体、お前は嫌じゃねーのかよ。
優勝者女だったら俺がキスすんだぞ!!」

あれ?なんか話が・・・・

「お祭だし、盛り上げたいし。だからホッペだけなら。でもそれ以上はダメだからね」
ねっと見上げる瞳はすごく可愛くて・・・・・。

すごいなーこの美少女さん。進藤さんが諦めたのか、思いっきりため息ついてる。
そりゃ、この美少女さんのお願いじゃ、断れないよなー。
あれ?なんで、進藤さんて異性に興味が無いんじゃ・・・・


「お前なー。男が優勝したらどうすんだよ・・・・」
あの、先輩。囲碁大会なら男の人の方が確立高いと思うんです。
「ホッペだけだから。いいでしょ。」
にっこり、美少女の必殺技で先輩は撃沈したらしい。
頭を抱えて座り込んでうめいている。それよりいますごいセリフが聞えたような。


「今さ。お前は俺のとかって聞えなかった?」
思わず隣を確認する
「うん。俺のなのにーって。でもそれって・・・」
頭の中がますます混乱し始める。

「あれ?君達知らないの?あの二人ってカップルだぜ」
委員さんが窓から見を乗りだして教えてくれた。廊下の窓越しに話していたのだ。

「カ!カップルー!!!」
僕たちが驚きのあまり声を上げたのは言うまでも無い。


だってあの進藤さんがだよ。だってあんなに美人な人がだよ。
碁バカぶりじゃ、若手棋士でトウヤさんと1、2を争う進藤さんがだよ。
なんでいつのまにあんな美人と・・・・。だってトウヤさんとは?

「だ、だって。なんで・・・・」
ぱくぱくと驚きのあまり単語にならない問いかけをしてしまう。
が、なんとなくわかってくれたらしい

「あー、ホント、もったいないよなー。そんなわけでさ、進藤暴れないよう見張ってくれる?
 後輩なんだろう?頼むね」
よろしくねー、と委員さんはにこやかに言って立ち去っていった。


いえ、僕達じゃ進藤さんは止められません。
というか、僕達まだ衝撃から立ち直れません。


無理ですー!!




あかりちゃん登場です。進藤君の独占力の強さは校内でも有名のようです(^^)
昨年は一体何をしでかしたのでしょうかね(^_^;)
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