始まりの少しだけ - 7 - 



あかりがあまりにも赤くなった顔で見つめてくるから、思わず俺まで照れてしまって、
目線を逸らしながら、ぶっきらぼうに「ほら、行くぞ」と言ってしまった。

まったく、さっきまでの余裕はどこにいってしまったのか、一度照れてしまうとどうもダメみたいで。
その後何を話していいかわからなくなってしまって、無言で二人で歩き続ける。
ふとあかりの方に視線を向けると、あかりは照れながらも、凄く嬉しそうな表情を浮かべていた。


俺はそのあかりの様子を見て、自然顔が緩む。
こいつは確かにこの手の先に、視線の先にいるのだから。



しばらくして、ふと何気に思いついた。別に今回は深い意味なんて何もなかったのだけど。
「でもなー。やっぱり先生は綺麗だよなー。
あかり、先生の連絡先ちゃんと聞いておけよ。後で和谷達に紹介して自慢しようっと」
そう言うと、あかりは機嫌を損ねたらしい。
「何で!」って言ってきた。


何でって教えてもらうって言っていたはずだったから。
折角、美人と知り合えたのだから自慢ぐらいしたいじゃないか。

「ヒカルってヒドイ!」
何でだよ?俺なんか悪いこと言ったか?と思いつつも、
どうも先ほど少々あかりをからかい過ぎたらしいと思い至った。

参ったな、やりすぎたかーと少々反省しつつ、
あかりを怒らしてまで先生と連絡を取りたいわけじゃないから、
和谷に自慢するのは諦めようかなと思った矢先。

「先生の連絡先は聞いといてあげる。私もいろいろ教えて貰いたいし。
そして絶対先生みたいに綺麗で素敵な女性になるんだから!!」
そうあかりが言ってくれた。


あかりは結局いつだって俺を許してくれるし。頼みごとはいつだってやってくれるんだ。
まあ、俺はそれにいつも甘えてしまってる訳だけど。
それに、あかりがもっと綺麗になってくれるなら俺にとっては大歓迎だし。
ちょっとプクっと膨れて言っているあかりが可愛らしいというか、楽しいというか。



そしてあかりが俺ににっこりと笑顔を向けた。
ほら、あかりの笑顔は、瞳は、いつだって俺に向けられている。
たぶん、今日これから今までとは少しだけ違う二人になるのだろう。
でも、きっとその歩みはゆっくりで。それでいい、と今は思う。
もう少しこの気楽な関係でも。
俺たちの時間はまだまだ先が長いのだから。



そして、いつか。
あかりが先生みたいな大人の女性になったころには、いやもう少し早いかもしれないけど。
その時には覚悟してろよ、こんな生ぬるい関係じゃ満足してやらないからな。
そんな事を思いながら俺はあかりのその笑顔に笑顔で返した。



そして、
「よし!お腹減ったからマックへ寄って帰るぞ!!」
「またマック?たまには違うところ!」
「じゃあ、ラーメン」
「そんなに食べれないよ」
「・・・我がまま」
「な!我がままなのはヒカルでしょう!家に帰れば夕飯あるんだから!太っちゃう!」
「俺は夕飯まで持たないの!お前はジュースでも飲んでろよ。とにかく何か食って帰るぞ!!」



いつもの二人の日常がまた始まる。













そして、その数年後・・・・



ちくしょうー!!


となりを歩くあかりに目を移した。嬉しそうに笑いながら話している。
そしてまた回りに視線を移す。さっきから通り過ぎる男たちの目線が・・・
かすかにため息をつきながら、あかりに視線を戻した。


そんな俺の心境も知らず、視線の下のあかりは俺を見上げてにっこりと微笑む。
それはとても綺麗で可愛らしくて、思わず俺も笑顔になるけど・・



「綺麗になりすぎだ・・・」
俺はあかりには気づかれないように小さく呟く。



あの頃の会話を思い出しながら、進藤ヒカルは今、確かに後悔していた。





(終)



ここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございます。 別設定の二人です。いかがでしたでしょうか? 正直、『セリフ』が先にあって、それから言う場面・設定を考えたのですが、 こんな設定になるとは、自分でも「あれ?」って感じでした。 もともと、その『セリフ』を言っている別の物語(私の妄想)では、 それこそ『お花畑で花びら舞い散る中、純粋な二人が・・』という、ほのぼの・甘甘な ワンシーンだったので。 うーん。進藤君が思いかけず性格悪くなってますね。まあ、それもまた良いかなーと(^_^;) 皆様が楽しんで頂けてると嬉しいのですが。 さて、実はさらに『おまけ』を作成してしまいました。 興味のある方はどうぞ。 なお、和谷君視点になります。

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