アキラ君のため息の訳
◆アキラ君16歳の初夏◆



「でさー。あかりのやつがさー」

目の前で進藤が話を続ける。

「・・・って言うんだぜ。何考えているんだ!って感じだろう?」

まったくさーとぶつぶつと呟いているが、結局何を訴えたいのか僕にはさっぱり判らない。

「なあ、塔矢もそう思うだろう?」

・・・・僕に何を言って欲しいんだ?

そう思いながらも「藤崎さんにもいろいろあるんだろう」ととりあえず答えてみる。

とたん、進藤は思いっきり嫌そうな顔をして、だってさーとか何か言い出した。

まったく・・・・

文句を言ったり、嫌そうな顔をするくせに何かと会っているみたいだし
(進藤は手合いやイベントなどでかなり忙しいはずなのにだ)、

映画や遊園地などの無料チケットが手に入れば、必ず誘っているらしいし、

食事やケーキなんかを奢ることもあるみたいだし、指導碁もやっているらしい。
(しかも進藤の部屋でだ!!)

本人は『食事を作ってもらった礼だ!』なんて仕方なさそうに言うくせに、嬉しそうに会いに行くし。

お礼なら僕もしないと、と言えば

『俺の幼馴染だし、俺が頼んでいるのだから塔矢はいいの!!』と断ってくるし。




つまりは・・・・

「だから・・・・って塔矢!聞いているのかよ!!」

「・・・・聞いている」

正直、話はほとんど頭を抜けていく。

「進藤。思うのだが、いつまで幼馴染やっているつもりなんだ?」

そうこの目の前の少年は、藤崎さんは唯の幼馴染と言って譲らない。

「へ?」

進藤は僕のいきなりの質問に顔を赤くして動揺する。





初めて藤崎さんが家に来てくれた頃は、幼馴染ってこういうものかーとも思ったけど。

脳裏に藤崎さんと進藤の姿が浮かんでくる。家に来て料理を作ってくれた時の光景。

その仲の良さはどう考えても・・・・

しかも進藤は何気に『俺のもの』宣言をしているし(俺の幼馴染!だが)

藤崎さんは多分進藤が好きなのだと思うし
(でなきゃ、わざわざ料理なんて作りに何度もきてくれないと思う)

この手には疎い自覚のある僕がわかるぐらいだから、お互いわかってもいいと思うのだが。




「あ、あかりはまだ幼馴染でいいんだよ!あいつ、ほら、全然色気とかないし・・・」

ぶつぶつと赤くなって否定しているようだが・・・・

『まだ』か。

ほら、つまりはそう言うことだ。




「あまり暢気なこと言っていると、この前緒方さんに言われたことになるぞ」

少々、意地悪心を起してそう言ってみた。

『誰かに取られるぞ』

そう緒方さんに言われたのだ。

進藤は、きょとんとした顔をしたあと笑って手を振りだした。

「ないないない。あるわけ無いじゃん、あかりなんか。あんな気が強い上に、色気無い女さー」

まったく何を考えているんだ、進藤は。

さすがにムッとしてくる。

「あかりをかまってやる奴なんて俺ぐらいだぜー」

へらへら笑って言っているが。藤崎さんは普通に可愛らしい女性だ!!

思わず不機嫌な顔をしてしまえば。

「まさか、塔矢。あかりに興味あるわけじゃないだろうな」

進藤はいきなりムスっと睨みつけてきた。

「まさか」

あの2人を間近に見ていればそんな気はおきなくなる。当たり前のことだ。
しかも、もしそんなことになったら進藤に何をされるかわからない。
まったく頭が痛くなってきた・・・・。

進藤は、僕の返事に気を良くしたのか、「だよなー」とニコニコして言った。

そして・・・

「そう言えば、あいつこの前なんかさー・・・・・」




また、始まった・・・・

そうこれは、『グチという名の惚気』である。

僕は進藤に気づかれないように、小さくため息をつく。

つまりこの2人に関しては

『幼馴染=恋人』ということなんだろう、結局。




久しぶりにアップしてみました。 別名『塔矢君の受難!!』シリーズです。 たまには、塔矢君目線というのもいいかなと。 この後、またシリーズしてしまいますが、 進藤君と塔矢君のイメージが崩れたらごめんなさい(^_^;)



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