誕 生 日 ?!
◆ 17 歳 ◆



「あー!くそー、もう少しだったのに」

目の前で幼馴染の少年が悔しそうにガラスの中を覗き込む。

そして、ジャラジャラと小銭をだしてもう一度チャレンジするようだった。

取れるまでやるのかもしれない、彼はこういう時に結構負けず嫌いだったりする。

北斗祭も無事に終わり、その後のゴタゴタしたこと(ヒカル談)もすべて終わり、

今日はたまたまヒカルも私も休日となった。

家ですることも無くボーとしていたらいきなりヒカルに呼び出され、今こうして遊んでいる。

こういうことは私たちの間では、幼稚園のころから良くあることで。




「取れそう?」

横からそっと声をかけてみるが、目の前のゲームに集中している彼は、

「ぜってー取る!」とひと言だけ言って、そのクレーンから目を離さない。

ヒカルってば、そのぬいぐるみ取ってどうするつもりなんだろう?

何かのキャラクターという訳でもないサルのぬいぐるみがクレーンに釣られている。

可愛くない訳じゃないけど、可愛いというわけでもなく。

ヒカルが特別にそのぬいぐるみを気に入ったわけでもない、

ただ単に通りかかったら「お!取れそうじゃん、あれ」と言って

ゲームに取り掛かってしまったのである。




「あーあ」

とヒカルには聞えないように小さくため息をつく。

折角、可愛い服着てお洒落してきたのだけどなー。

目の前の幼馴染はさっきからゲームに夢中だ。





ほどなく、ガランという音をたててサルが落ち、ヒカルの手の中に収まった。

「やった!!見ろよ!!」

よかったね、と笑う私にヒカルは得意満面の笑みを浮べた。

のだが・・・



ヒカルはジーとそのサルを見つめ、そして次に私を見つめる。

そしてまたサルをジーと見つめ何か考えているようだった。



ああ、考えていることがわかってしまう・・・



「あかり、これ・・・」

取ったはいいけど、いらないんだろうなー。

「えー、これさー」

「何?」

何か言いたいのかはわかっているけど、とりあえず笑顔で首を傾げてみた。



可愛くはないけど、可愛い訳でもないちょっと大きめで手の長いサルのぬいぐるみ。



「あ!そう言えば!!」

ヒカルが何かを思い出したようだった。

「お前、誕生日ってたしか・・・」

えーとって日にちが出てこないらしい。

「・・・・・10日も前に過ぎました」

少々、ムスーとしつつ低く答える。

そうするとヒカルはちょっと慌てたようだったが、気を取り直して笑顔をつくった。

「そう、そうだよな。すぎちゃって悪いけど。ほら誕生日プレゼント」

にっこりとサルを手渡してきた。

「・・・・・これ?」

手渡されたサルを見つめる。

「可愛いだろ?」

にこにこ笑顔を作っているヒカルをジトーと見つめ返す。

「あー、うん、あかりに似合っているって・・・」

ははは、と笑って誤魔化そうとしている目の前の幼馴染。

「誕生日プレゼントなの?」

取るのが楽しくて取ったはいいけど、いらないぬいぐるみ・・・・・

これなの・・・?

ムスーと頬を膨らませる。今日は急な呼び出しだったけど、一生懸命お洒落して・・・

確かに誕生日は過ぎていたし、プレゼントを期待していた訳でもないけど。

でも・・・




「気持ちがこもってない・・・」

ムーと睨む。

「いや、その、えー、ほら俺の気合がこもっているから」

気合い・・・確かにさっき気合入れてゲームしてたけど・・

「いらないから、押し付けたいのでしょう・・・」

せめて誕生日プレゼントじゃなくて、ただ「やる!」でもらった方が良かった・・・


怒った顔をした私にヒカルが慌てたらしい。

「あー、ごめん」

とうとうヒカルが素直に頭を下げた。

「誕生日忘れてた。お詫びに今日この後あかりが行きたいところにどこでも付き合うから。

映画でも買い物でもカフェでも。奢るよ」

悪かったって機嫌治せよ、と困った顔をしながら。





「本当に?」

ヒカルはうん、うんと頷いた。

普段ヒカルは買い物やお洒落なカフェとかには付き合ってくれない。

みょうに気恥ずかしいらしい。

「じゃあ、映画見てカフェ行こうね」

機嫌を治してにっこり笑ってヒカルの腕を取る。

「早く行こう、ヒカル」

笑った私に安心したのか、ヒカルがホッとした顔をする。

「そのサルだけど・・・」

言いづらそうに空いている手でサルを指差してきた。




「折角だからもらってあげる」

可愛い訳じゃないけど、折角ヒカルがくれるって言うし。

良く見れば愛嬌ある顔をしている。

それに、ヒカルに入らないって言われてしまうところが何か・・・

ちょっとヒカルに気づかれないように苦笑する。

自分と似てるかな。

あとで名前を付けてあげようっと。



とりあえず今日はヒカルの苦手な純愛ものの映画をみて、

思いっきりお洒落で可愛いカフェに入ること決定!!




私がヒカルを見上げてにっこりと笑うと、ヒカルは覚悟を決めたように小さくため息をついた。



17歳の誕生日時点ではまだ幼馴染です、当サイトではね。 ただ「やる!」なら素直に「ありがとう」と言えるのに、 「誕生日プレゼント」と言われるとちょっとショックですよね。 と、私などは思う訳です。 そんな訳でちょっとムッとしたあかりちゃん、 ワザとヒカル君の苦手な純愛ものか恋愛ものの映画を選んだりします。 でも、もしかするといい感じになるかもしれないかなーなんて淡い期待も込めてね。 まあ、ダメだった訳ですけど(^^;) きっと家に帰ってサルのぬいぐるみ相手に「鈍感!」と怒っていることでしょう。 さてラスト18歳の誕生日ですが、 ちょっとお待ちくださいね。

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