誕 生 日 ?!
◆ 18 歳 ◆



「かあさん、あかりに何吹き込んでんだよ」

ヒカルが階段を降りながら、呆れたようにおば様に声をかける。

「あら、何でもないわよ、ねえあかりちゃん」

おば様はにっこりと私に笑顔を向けた後、ヒカルに向き直る。

「それより、ほら。あかりちゃんを待たせないの!まったくこの子はいくつになっても・・・」

そして、おば様は「いっていらっしゃーい」とにこやかに笑って送り出してくれた。



今日は久しぶりにヒカルと午前中から一日デートだ




「あー、今度から外で待ち合わせしようか?」

駅までの道を2人でゆっくりと歩きつつ、ヒカルが頭を抱えながらそう提案してきた。

「え、でも。別にどっちでも」

学校帰りとかは確かに外で待ち合わせもするけど、ヒカルは遅れてくること多いし。

「学校帰りとかならともかく。お互い家から出かけるなら、このままでいいよ」

つまりどちらかの家までどちらかが迎えに行く。

とは言っても、ヒカルが私の家に迎えに行くことは非常に少ない。約束の時間より遅くなるからだ。


それともう一つ。

私が早くヒカルに会いたくて、落ち着かなくて、

早めに仕度をおわしてしまって早めにヒカルの家に行ってしまうから。

だって、会いたいから・・・・

だから、外で待ち合わせなんて。

家から歩いて数分のところにヒカルがいるのに、もっと遠いところで待ち合わせなんて。





ヒカルはそうか?と言いながら何かを少し考え込んでいた。

「まあ、外で待ち合わせしてこの前みたいなナンパとか困るしなー。母さんぐらい我慢するか」

母親のからかい と ナンパ を天秤にかけていたらしい。

先日、街で待ち合わせしていたらしつこいナンパ男達に絡まれてしまって、

絡まれている最中に現われたヒカルの怒りと言ったら・・・

さすがに暴力沙汰にはならないけど、低い言葉・鋭い眼光・冷ややかな怒り。

かもし出す雰囲気が・・・・



思い出していたのか、顔をしかめていたヒカルがふと私を見つめ、そして笑った。

「そう言えば、まだ今日は言ってなかったな。18歳おめでとう」

それを聞いて私はくすくす笑い出す。

「ありがとう。でもおめでとうはもう何度も聞いたのに」

誕生日当日はひかるに仕事が入っていて、結局会えなかった。

だけど18歳になった瞬間と17日の夜にそれぞれ電話をくれて、お祝いを言ってくれた。

そして、今日。誕生日から一番近かった休日。

ヒカルは一日休みを入れてくれて、今こうして午前中から2人で一緒にいる。



「まあ、何度言ってもいいじゃん。顔見て言うの初めてだし。それより欲しいものは決めたのか?」

ヒカルは一応何かプレゼントを!と思ってくれたらしいけど、

結局何を買えばいいか判らなくなり、頭を抱えたあげく、

「あかりが欲しいもの何でも買ってやるよ」となったのだ。

デパートで女子高生やら女子大生に混じってバックやアクセサリーを見たらしいけど、

いたたまれなくなって早々に逃げ帰ったとか・・・

ヒカルの気持ちは嬉しいけど、その時の様子が想像出来てしまって思わず笑ってしまう。




その時のヒカルの顔を想像してしまい、

思わず顔がほころんでしまった私を彼は不思議そうに見下ろしていた。

「何がいいかなー」

「・・・決ってないの?」

その顔を見上げながら返事をすると、彼は少々顔をしかめた。

「ちょっと決らなくて。今日一日いろいろ回って決めようと思って。一緒に選んでね」

にっこり笑って言うと、彼は微かに嫌そうな顔をしたあと、

覚悟を決めたように「わかった」とだけ言った。



ヒカルは女性ばかりが行くショップが苦手なのは知っているけど。

私がどうしよう・・・と悩みながら買い物するのに付き合うのも苦手なの知っているけど。

だけど・・・

折角一日一緒なのに、すぐに決めて買ってしまうのはもったいないし。

2人で一日街をショップとか見ながらプラプラと歩いてみたいし。

ヒカルに選んでもらいたいし。

今日は私のお祝いなんだから、いいよね。




「嫌だった?ごめんね」

でも、ヒカルが苦手なのを承知だったから、ちょっと罪悪感があって謝りの言葉を述べる。

そうすると、彼は私をびっくりしたように見下ろして「バ〜カ」と軽く頭を小突いてきた。

「な、なんで!!」

憤慨する私を呆れたように眺め小さくため息をつく。

「あのなー。今日は一日お前に付き合うって決めたの。それでお前の好きなもの買うって。

誕生日、まあ過ぎてるけど・・・遠慮してどうすんだよ」

覚悟は出来てる!と妙に神妙な面持ちで気合を入れる。

「遠慮しなくていい?」

「当たり前だろう。こうなったらどこにでも付き合ってやる!!」




渾身の覚悟をもってそう言ってくれるヒカルが嬉しくて。

一日一緒にいてくれることがうれしくて。

誕生日を覚えていてくれたことがうれしくて。

何かをプレゼントしてくれようと思ってくれていることがうれしくて。

私は自然と笑顔になる。




「何を買ってもらおうかなー」

本当はヒカルが選んでくれるならなんでもいいのだけれど・・

どうせだったら、いつも身につけられるものがいいな。

「何でもいいよ」

そう言ってくれるヒカルに私は笑顔を向ける。

「本当に?遠慮しなくていいんだよね」

ちょっとふざけてクスクス笑いながら見上げてそう言ってみる。

「・・・・しなくていい」

ヒカルはちょっと躊躇したみたい。

『遠慮しないで何でも買ってもらいなさい。今月は多めに渡したから高くても大丈夫よ』

出かける前におば様に耳打ちされた言葉。

ヒカルの給料はおばさんが管理している。

ヒカルが働きだしたのはまだ中学生だったからそうしたみたい。

それでも自分で稼いでいるのだからとヒカルが自由にできるお金は、

私たち高校生からしてみればすごく多くて、結局いつもデートはおごってもらうことが多い。




でも、別に高いものが欲しいわけじゃなくて。

金額なんて別にどうでもいい。

ヒカルが選んでくれて、いつでも持っていられるものだったら。




「何買ってもらおうかなー」

ヒカルを見上げてもう一度にっこりと笑う。

「ねえ、ヒカル。早く行こう!!」

ゆっくりと歩いているヒカルの腕をしっかりと掴んで彼をひっぱる。

「お、おいって!!」

いきなり腕をつかまれたヒカルはちょっと驚いたみたいで、戸惑ったような顔をしていた。




でも、私は今日が楽しみで。これからが楽しみで・・・・

嬉しくて・・・





ヒカルが、暖かくなるにつれて薄く軽くなっていく私の服装に、

私が無邪気に触れることに、どうしようもなく焦り、戸惑っていたことを・・・

後日言われるまでまったく気がついていなかった。



さて、18歳の誕生日。 こーんな感じで如何でしょうか? 恋人編のはずなのに、いまいち甘くないですね(^_^;) でも、17歳の頃はあかりちゃんに腕をつかまれても全然平気だったのに、 18歳だと焦ってしまうヒカル君!!というのをちょっと書いてみました。 わかります? それとあかりちゃん、誕生日を覚えていてくれたことがまず嬉しいのです。 いつも忘れられていたことが多いので・・・ ちなみに、おまけなど書いてしまいましたが、ひかりの2人は出てきません。

⇒おまけ

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