塔矢君家の食卓事情
★塔矢アキラ君 17歳の春 のとある夕刻★


目の前に松華亭のお重が並べられた。

そして、それだけじゃ足りないだろうとあかりさんが作ったお吸い物と料理が数点。

6人分のお重だったが、倉田さんが来るというので足りないぞ!という話になったのだ。

「あかりー。俺、お吸い物ならあれがいい。卵入ってトロっとしてるやつ!!」

進藤はちゃっかりリクエストなどしていた。



で、暖かいお吸い物と暖かい料理、そして豪華お重が目の前に並んでいる。

「あの。松華亭の料理と一緒じゃ恥ずかしいんですが・・・」

あかりさんは少々赤くなりながら、料理を運んでいたが。

そんなことはない、素朴だが美味しい家庭料理だ。

進藤の彼女なんてもったいなさ過ぎる。なんだってわざわざ進藤なんて選んだんだろう?

「今日はすごいじゃないか!!松華亭のお重にあかりちゃんの手料理!!」

倉田さんがさっきから嬉しそうに「うまい!うまい!」とバクバクと勢い良く食べている。

味が解っているのだろうか?

進藤と言えば、当然の様にあかりさんの隣に座って

お重の料理やあかりさんの手料理に手を伸ばしている。

「あ、これうまいや。あかり今度これ作って」

「えー、無理だよー。プロじゃないとこれは・・・」

「じゃあ、今度食べに行こうぜ」

「うん!あ、これも美味しいよ」

などと二人していちゃいちゃと・・・・




ふと隣の社を見れば、ため息をつきながらお重に手を伸ばしている。

目が合えば無言で首を振っていた。

社は昨日もこの状態を見ていたのだろう・・・・。

塔矢はそんな二人を気にするでもなく、黙々と食べていた。

「あかりちゃん、料理本当にうまいなー」

「あ、ありがとうございます」

倉田さんに微笑んでお礼を言うあかりさん。

「進藤はラッキーだよなー。うん」

「なんだよ、それ」

進藤は少々ムッとしているようだった。

「今日は和食だろう。明日は中華がいいなー」

「あ、中華ですね」

「はあ!何、倉田さん我がまま言ってんだよ!!」

「いいじゃないか、進藤。進藤はいつでも食べれるんだろう?」

「良くない!!あかりは俺の彼女なの!!」

倉田さんに食ってかかる進藤。あー、焼もち焼くわけね、一丁前に。

「ヒカル。落ち着いてってば」

あかりさんが、身を乗り出していた進藤の腕を掴んで落ち着かせる。

それにしても、あかりさんはどうして進藤がいいのだろうか?

あかりさんに宥められて、進藤はぶつぶつ言いながらもとりあえず落ち着いて箸を取り直したが。

そこに

「本当にいつも悪いね、あかりさん」

今までもくもくと食べていた塔矢が会話に入ってきた。




「え?」

「いつも美味しい料理を作ってくれて、学生で忙しいだろうに。本当に申し訳ないね」

「あ、気にしないで。料理とか好きだし」

ふるふると首をふるあかりさん。

「私の方こそ、みんなの邪魔をしているんじゃないかと・・・」

「そんなことないよ。いつも助かっている」

にっこり笑う塔矢。

あかりさんが少し照れたように頬を赤く染める。

ほのぼのとした空気が流れる様な気がする。

それをみた進藤がますますムッとしているようだ。

なんか一波乱ありそうな・・・

「そうだ。確かあかりさんは五月が誕生日だったよね。

 お礼に北斗祭が終ったら何かお祝いを贈るよ。何か欲しいものあるかな?」

にっこり笑って聞く塔矢。彼氏の目の前で結構大胆だ。

「え、そんな・・・」

慌てて遠慮するあかりさん。その隣で進藤は・・・

「塔矢!!礼なら俺がいつもしているからいいんだよ」

「僕はお世話になっているあかりさんにお礼をしたいんだ!人として当然だろう!」

ギロリとにらみ合う二人。間でおろおろするあかりさん。「二人とも落ち着いて」と言っている。

「とにかく!あかりは俺の彼女なんだよ!!礼なら俺がしているし。
 
 欲しいものがあれば俺が買うの!!塔矢は何もしなくていいの!!」

知らなかった、進藤はかなり独占欲が強いらしい。贈り物をすることすら許さないみたいだ。

「進藤って結構焼もち焼き?」

思わず小声で社に確認する。

我関せずと黙々と食事を続けていた社は、「かなりな」と小さく返事をした。

「塔矢ってまさか・・」

「そこが解らんのや」

小さく聞えないように会話を続ける。




やはり、どこでも焼もち焼きな進藤くんです。 もうちょっと続きます。

⇒次へ

⇒目次へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送