フィーメンニンは謳う
◇  笑 顔  ◇



「リーナ!大丈夫?」

あの世界での不思議な冒険が終わり、私には日常が帰ってきた。

「体の調子はもういいの?」

あの世界で長い間過ごしていたと思っていたが、こっちの世界では数日のことだったようだ。

そして、途中一度戻ったときの私は余程ボゥっとしていたらしく、

回りの人たちは風邪か余程体調を崩していたと思っていたらしい。

「ええ。もう大丈夫よ」

心配する友人ににっこり笑って答える。

ここが私の生きる世界。





「それにしても、丁度あのユリウスまでずっと休んでいたのよね」

友達がそう言いだした。

「無断休暇でしょう。今、先生に呼ばれているらしいわ」

「ホント、始めはユリウスとリーナが一緒に休んでるからいろいろ考えてしまったけど、

リーナは体調崩してたんだものね。あの人はどうしたのかしらね」

ユリウスの名前がいきなり出て、思わずドキリとしてしまう。
「か、彼。先生に呼ばれているの?」

思わずどもってしまった

赤面していたのかもしれない、友人達は私をみておやっという顔をする。



「リーナ?やっぱり彼が気になるの?」

「そうよねー、最大のライバルだしね」

「あ、あの。そうじゃなくて」

あの事を言ったら友人達はどう思うだろうか?




「ねー、気になるの?リーナってばずっとユリウスばっかり気にしてたものねー」

「そうそう、気になる最大のライバルがいつしか気になる男性へ・・・」

キャー素敵よ!なんて騒ぎ出す友人達。

「ち、違う!!そんな訳無いじゃない!!」

思わず。違う。そうじゃないのに・・・・

「えー、違うの?」

「まあ、あの鉄仮面じゃねー」

「たしかに、変っているしね」

「あ、いえ。その・・・」

言わないといけないのに・・・・

友人達は、彼頭はめちゃくちゃいいけど、のほほんとしてるし、

どっかずれてるしねーとか言っている。

「そ、そうよ!そんなはず無いじゃない」

思わずそう言ってしまった私。

何やっているんだろう・・・



思わずため息をついたとき。

友人達が私の後ろをジーと見つめた後、慌て始めた。

「あの。その。ユリウス。お久しぶりね」

「そうよ、心配してたの。どうしたのかなって・・・」

あははと乾いた笑いをもらす。

ユリウス?

恐る恐る振り向くと、そこには彼が立っていた。相変らずの無表情で私をジ一と見つめている。

「あ、あの・・・」

どうしよう。

思わず、おろおろしてしまっていると、友人達が私の両腕をがっしり掴んでひっぱりだした。

「ユ、ユリウス。それじゃ、私達。失礼するわね」

そう言いながら、やばいわ・やばいわ、と私を引っ張って行く。

でも、振り向きながらユリウスを見る。

無表情でこちらの方を見ていたけど、ふと目線を外した。

どこか寂しげなその風貌・・・・

「ごめん」

気が付けば、私は友人の手を振り解いていた。




「ユリウス!」

彼の名前を呼んで、彼に駆け寄る。

「ごめんなさい」

小さな声で謝る。

「つい、あの・・・・」

どうして私はこんなにも天邪鬼なのだろう。

「リーナ」

彼が優しい声で私の名前を呼ぶ。

「吊橋の恋って知ってる?」

吊り橋の恋ってたしか・・・・

そう、ドキドキと緊張したり恐怖を一緒に感じたりしたとき、

その時の感情を恋と勘違いしてしまうという現象?

「ユリウス?」

「別に気にしなくていいよ」

かすかに寂しげに言う彼。

つまり、彼は私の感情がそうだと言いたいのだろうか?

いや、私がさっきあんなことを言っていたから・・・

「ち、違うの。つい、その、ごめんなさい」

彼の腕を掴む。どこかに行ってしまわないように。

「私、ちゃんと、ユリウスのこと・・・・」

カァァーと顔が赤くなる。

その間、ジッと私を見つめていたユリウスが不意に微かに微笑んだ。

「リーナ。本当に?」

こくんと頷く私に、彼は安心したかのように、そして嬉しそうな笑顔を見せる。

ホッとして、良かったと思っていた私だけど、あることを忘れていた。




「きゃー!!」

後ろで黄色い悲鳴が上がる。

そう言えば・・・・

思わず、ユリウスの腕を振り解いて振り向けば、案の定友人達がキャァ、キャァとはしゃいでいる。

しかも、他にも何人かギャラリーは居たみたいで・・・・

慌てる私を他所に。

「まあ、校庭だったし。みんなに見られていたか・・・」

と淡々と状況を述べるユリウス。

「ちょっと、何を冷静に・・」

思わず、睨みつけてしまう。



「見た?見た?あのユリウスが笑ったわよ!」

「すごいわー!」

と、騒ぎ立てる友人達。当分、からかわれるだろうなと頭を抱えてしまう。でも、まあ・・・

ふと、ユリウスを見上げれば、あの優しい瞳で私を見返す。

にっこりと微笑めば、やっぱりにこりと優しい微笑みを返してくれる。

まあ、仕方ないかな。この笑顔のためだし・・・

そう思いながらも、「もう!騒がないで!!」と言いながら私は友人達に駆け寄った。

やさしい眼差しを背中に感じながら。



書いてしまいました『フィーメンニンは謳う』 この漫画好きなのです。本のブログでも書きましたが、本当に素敵なのです。 ほのぼのとした優しいファンタジーです。 私はユリウス君のあの優しさが好きです。 けしてストレートな優しさではなく、一見判りにくい優しさですが、 とにかくすごく大きな優しさなのです。 と、言ってもこの『フィーメンニンは謳う』は随分前の漫画ですし、 アップしても皆判らないだろうな〜と思い、書いたままお蔵入りしていたのですが。 メールでこの漫画も好きです!!とコメント頂きまして。 勇気を出してアップしてみることにしてみました。 ここにてお礼を、メールを下さいましてありがとうございます。 実は初メールでした(^O^) さて、場面は?と申しますと・・・ 2人が元の世界に戻った直後です。 さて、あともう少しだけ続きます・・

⇒次へ

⇒目次へ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送