サ ヴ ァ イ ヴ
◇ う わ さ ◇




結局、私は航海中女性クルーや若い女性客達からキツイ視線を送られ続けることになる。

どうせ、一度も二度も一緒だと思い、その後カオルと何度か顔をあわせた。

船の中で偶然会うこともあった。

その度に痛い視線を感じる。



中には直接談判しに来る女性もいて。その度に「私とカオルはそういう関係ではない。

ただの昔の仲間だ!」と訴えることとなる。

もっと困ったのが「頑張ってください。カオル様の相手として貴方なら許せます」と

よくわからない激励をされることもある。その度に違う!と訴えるのだが。

なぜか皆あまり信じようとしないのだ・・・



「何故だ・・」

とハワードにため息交じりに愚痴れば。

「まあ、そういうもんだろう」

と、人事のように帰ってくる。

こいつと2人なのは何も言われないのに・・・

「カオルも何か言えばいいじゃないか!何故黙っているのだ!!」

そう訴えれば

「あいつ、まったく気にしていないからな。まあ、ある意味一途というか、思いっきり鈍感というか」

ファンがいることにも気がついているかどうか・・・

呟いてハワードがため息をつく。

ルナのことしか気にしていない訳か・・・




仕方が無い・・・

どうせ、明日には目的地に到着するのだから。

この居心地の悪さとももうすぐお別れだ。

まあ、ハワードはもう少しこの船に乗っているらしい。

次の撮影場所が思いっきり辺境地でこの船の最終駅らしいから。

そうたかをくくっていたのだが・・・・





「メノリ。あなたこの記事読んだ?」

父の出張先にシャアラから恒星間通信がかかってきた。

「記事?」

あまりゴシップなんて読まないでしょうからとシャアラが送ってくれたデーターを確認する。

「・・・・・」

思わず目を見張る。なんだ?これは!!

「シャアラ?なんだこれは・・・・」

青い顔で問いかける私にシャアラは困ったように首をすくめる。

「今けっこう話題になっているわよ。面白いわね」

「面白いですむか!!」

私は憤慨し、そして新たなところへ通信を繋げた。



「ハワード!!」

予定では、最終目的地についているはずだった、問題は辺境すぎて回線が繋がるかどうかだが、

運良く何度目かの呼び出しでやっと繋がった。出てきた青年は驚いたように目をむいていた。

「珍しいじゃないか、メノリが電話してくるなんて」

どうかしたのか?と問い掛けてくる。ということは記事を読んでいないらしい。

「カオルはいるか?」

操縦士のカオルに繋がる回線がわからなかった。だからハワードに連絡をした。

特殊な職業の彼の通信機は最新鋭で、辺境でもかなりの確率で通信が繋がる。

「カオル?お前タイミングいいな。ちょうど今話していたところだ。」

画面が変わり、あの端麗な顔が映し出される。

「メノリどうかしたのか?」

カオルが少し顔をしかめる。当然だろう、こんな呼び出しは私にしては珍しい。

「これを見ろ!」

シャアラから送られたデーターを送る。

美形な男性が2人して画像を覗き込んでいる。

「ヒュ〜♪ すごいな」

一人は楽しそうに笑う。

「・・・・」

一人はじっくりとその記事を読んでいるようだ。

「なんだ!これは!」

私は2人の男性に怒りの声を向けた。

「何だって、これ、お前とカオルのスクープだろ?」

いつのまに付き合ってたんだ?と笑いながらからかってくる。

「貴様!笑い事じゃないだろう!!」

悪い!悪い!と謝っているが、顔は笑っている。

「ちょっと待ってろよ、他の端末で他にも記事があるかみてみるよ」

ハワードが笑いを堪えるかのようにして席を離れる。

あれは絶対に思いっきり笑いに席を外したにきまっている。




つまり、シャアラの送ってきたデータというのは。

『○○議員の美人令嬢のお相手は美形操縦士! あの奇跡の生還メンバーの恋!』

『無人惑星で育まれた愛』

だのなんだの書き立たれて、二人で笑っている写真まで公開されている。

つまり私とカオルが恋人同士と書かれているのだ、しかも父まで了承済みとかなんとかと・・・



事実無根だ!!



メノリさん怒ってますが・・・

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